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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0107A01: 出家の本意を遂侍ぬる。今に於ては。跡を林藪にの
J17_0107A02: がれんと。闍梨の云。たとひ志ありとも。まづ六十
J17_0107A03: 卷を讀渡して後。その本意を遂べしとの給へば。我
J17_0107A04: いま閑居をねがふ事は。ながく名利の望をやめて。
J17_0107A05: 心靜に佛法修學せんが爲也。此仰尤本意也とて。
J17_0107A06: 十六年の春より。十八歳の秋に至るまで。三ケ年の光
J17_0107A07: 陰をふるに。六十卷の淵源をきはむ。五時四敎の廢
J17_0107A08: 立。惠日をかがやかす事。程程師範にこえ。三觀一
J17_0107A09: 心の妙理。祖風をつたふる事。深く佛意にかなへり。
J17_0107A10: 入叡空上人室事
J17_0107A11: 此の新發意。日に隨て智辯無窮なる間。闍梨いよい
J17_0107A12: よ感歎して云。まげて講説をつとめ。速に大業をと
J17_0107A13: げて。佛家の樞鍵として。圓宗の棟梁にそなはり給
J17_0107A14: へと。度度念頃にすすむれども。更に承諾の詞なく
J17_0107A15: して。なを隱遁の色ふかかりければ。然ば黑谷に住
J17_0107A16: して。慈眼房を師とせよ。かの慈眼房叡空は。眞言
J17_0107A17: 大乘律におきては。當時たぐひすくなき英髦なりと
J17_0107B18: いひて久安六年庚午十八歳の九月十二日に。初めて闍
J17_0107B19: 梨相具して。黑谷の叡空上人の室に至る。上人發心
J17_0107B20: の由來をとひ給ふに。親父夜討の爲に。世を早せし
J17_0107B21: より。其遺言片時も不忘次第。具にかきくどき給ひ
J17_0107B22: ければ。委ききて隨喜して云。少年にして早く出離
J17_0107B23: の心を發せり。誠にこれ法然道理の聖りとて。法然
J17_0107B24: をもて房號とす。いみなは源空。これ則初の師の源
J17_0107B25: 光の初の字と。後の師の叡空の後の字をとれるな
J17_0107B26: り。
J17_0107B27: 法花修行時白象出現事
J17_0107B28: 黑谷に住してより後は。叡空上人に隨て密と戒とを
J17_0107B29: ならひ。其後一切經論。飢をしのびて日日にひらき。
J17_0107B30: 自他宗の章疏眠をわすれて。よなよなに見る。其外古
J17_0107B31: 今の傳記日記。和漢の祕書祕傳。手に取。眼にあて
J17_0107B32: ずといふ事なし。諸宗に渡て修行せられけるに。法
J17_0107B33: 花三昧修行の時は。白象道場に現ず。上人ただ獨こ
J17_0107B34: れを拜す。餘人見ざる所也。

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