浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0099A01: | ば。互に殘害をまねくべし。報酬念念にたへず。輪 |
J17_0099A02: | 迴生生につくべからず。凡そ生者は死をいたむ。我此 |
J17_0099A03: | 疵を痛。人またいたまざらんや。我此命をおしむ。 |
J17_0099A04: | 人豈おしまざらんや。心をおこして人の腹におけば。 |
J17_0099A05: | 我をもて他の心をしりぬべし。昔敎主釋尊も。頭痛 |
J17_0099A06: | 背痛とのたまふ。曠劫の殺罪。佛果になほ餘殃あり。 |
J17_0099A07: | 一念の怨心聖賢其障礙を恐る。今生の妄縁を捨て。將 |
J17_0099A08: | 來の宿報をつぐ事なかれ。梵王の四等を行ずる。慈 |
J17_0099A09: | 心を最とす。世尊の十重をときたまふ。殺生を初に |
J17_0099A10: | 禁しむ。汝あなかしこ。法師になりて。學問して爺 |
J17_0099A11: | 孃の恩德を報じ。衆生の依怙とならんとおもふべし |
J17_0099A12: | といひをはりて。心をただしくして。西方に向て高 |
J17_0099A13: | 聲念佛して。ねむるがごとくに息絶にけり。 |
J17_0099A14: | 五 登菩提寺事 |
J17_0099A15: | 當國菩提寺の院主。觀覺得業は。秦氏の弟也。小矢 |
J17_0099A16: | 兒には叔父なり。此兒。父におくれて後は。偏に親 |
J17_0099A17: | 子の如し。愛好して弟子とす。同年の冬。菩提寺へ |
J17_0099B18: | のぼせけり。はじめて佛敎をさづくるに。性甚岐嶷 |
J17_0099B19: | にして。聞所の事憶持して更にわすれず。 |
J17_0099B20: | 六 爲登山母乞暇事 |
J17_0099B21: | 觀覺。同朋に語て曰。此兒の器量を見るに。常のと |
J17_0099B22: | もがらに類せず。何ぞ徒に邊國にあらんやとて。久 |
J17_0099B23: | 安三年丁卯年十五歳の春。延曆寺へ登せける。其時。 |
J17_0099B24: | 此兒母に暇をこひて云。母。獨身におはします。我。 |
J17_0099B25: | 一子たり。然朝夕に給仕して。父の形見とも見へ奉 |
J17_0099B26: | るべけれども。登山して佛法修行して。二親をみち |
J17_0099B27: | びき奉らんとおもふ。今の別をなげき給ふ事なかれ。 |
J17_0099B28: | 流轉三界中。恩愛不能斷。棄恩人無爲。眞實報恩者 |
J17_0099B29: | と承れば。今日より後は戀悲恨み思召べからず。參 |
J17_0099B30: | 河守大江定基は。出家して大唐へ渡り侍し時。老母 |
J17_0099B31: | にゆるされを蒙りてこそ。彼國にして圓通大師の諡 |
J17_0099B32: | 號を蒙り。本朝に聖衆來迎の佳什を傳へしか。ゆめ |
J17_0099B33: | ゆめ惜思召べからずなど。かきくどき念比にのた |
J17_0099B34: | まふ。母ことはりにをれて。綠なる髮をかきなでて。 |