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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0100A01: 泪計ぞ。頂にそそぎける。今思ひ合すれば。祕密灌
J17_0100A02: 頂とかやにぞ。ものはいはずして。頂に水をそそぐ
J17_0100A03: なると申は。ケ樣の事にや侍らん。母思のあまりに
J17_0100A04: くちずさみける歌。
J17_0100A05: かたみとてはかなき親のととめてし
J17_0100A06: 子のわかれさへまたいかにせん
J17_0100A07: 此理りを。觀覺こそ申さまほしく侍つるを。こまご
J17_0100A08: まとありありしく。仰こと侍ぬれば。それにつけて
J17_0100A09: も。かしこくぞ御學問のよし。思ひより侍ける。昔
J17_0100A10: 晋の肇公。幼くして師匠の法華經飜譯のとき。人天
J17_0100A11: 交接のことは。書わづらひ給ける。さかしう思合ら
J17_0100A12: れて哀にこそ侍れ。母。生る子にをしへらると。悉達
J17_0100A13: 太子。母のために摩耶經を説き給けるも。思ひなず
J17_0100A14: らへつべし。小兒辯説をふるにつけ。老母承諾する
J17_0100A15: に似たれども。有爲の習忍びがたく。浮世の別れ迷
J17_0100A16: ひやすく。昔の釋尊は衆生利益のために。十九にし
J17_0100A17: て父の王に忍びて城を越檀特山にこもり給き。今の
J17_0100A18: 小童は。佛法習學のために。十五歳にして。母儀を
J17_0100B19: こしらへて。家を出比叡山にのほる。
J17_0100B20: 七 參會法性寺殿御出事
J17_0100B21: 此兒。入洛の時。久安三年二月十三日。つくり路に
J17_0100B22: て。時の關白法性寺殿の御出に參り合奉りて。傍な
J17_0100B23: る小川に打寄給けるを。御車よりいかなる幼きもの
J17_0100B24: かと。御尋ありければ。兒のをくりに侍ける僧。美
J17_0100B25: 作國より學問のため。比叡山にまかりのぼる小童の
J17_0100B26: よし。申ければ。御車をかけはづさせ。ちかく御覽じ
J17_0100B27: て。能能學問せらるべし。學生になり給はば。師
J17_0100B28: 匠にたのみ思召べきよし。念比に御契有けり。いな
J17_0100B29: か童に對して。この禮は心得ぬ事哉と。上下の供奉
J17_0100B30: 人思ける程に。彼小童。眼より光を放て。ただ人に
J17_0100B31: あらざる間。此禮を致せりと。後に仰られけり。實
J17_0100B32: に不思議社。
J17_0100B33: 八 登西塔北谷持法房事
J17_0100B34: 從是以下事義相同。上卷欠行又少違在之。故令書
J17_0100B35: 寫者也。

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