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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0098A01: むため。見聞んものの信をすすめんために。數軸の
J17_0098A02: 畫圖にあらはし。萬代の明鑒にそなふ。念佛の行者
J17_0098A03: として誰人か信受せざらむ。
J17_0098A04: 一 上人誕生事寫本直のごとし
J17_0098A05: 二 鞭竹馬遊覽事
J17_0098A06: 此兒。襁褓の中より出てて。やうやく竹馬にむちう
J17_0098A07: つて遊ぶ。其名を勢至丸と號す。二歳の時。出生の
J17_0098A08: 日時にあたりて。初言に南無阿彌陀佛と唱ふ。聞人
J17_0098A09: 耳をおどろかす。四五歳より後は。その心成人のご
J17_0098A10: とし。性甚聰敏にして。聞所も不忘。又もすれば。
J17_0098A11: 西の壁に向ふくせあり。月氏には釋迦大師。初言に
J17_0098A12: 南無佛と唱へたまひ。日域には。上宮太子。初言に
J17_0098A13: 南無佛と唱へ給ふ。震旦の智者大師は。生をうけて
J17_0098A14: より以來。常に西方にむかへり。今此小兒。三國の
J17_0098A15: 奇瑞を一身に周備せり。見聞の人是を美談して。往
J17_0098A16: 還の輩これをあやしまずといふことなし。
J17_0098A17: 三 夜討の事
J17_0098B18: 保延七年の春の頃。時國夜討のために殺害せらる。
J17_0098B19: 其敵は伯耆守源長明が嫡男。武者所定明也。人呼で
J17_0098B20: 明石の源内武者といふ。堀河院御在位の時の瀧口
J17_0098B21: 也。殺害の造立は。定明。稻岡庄の領所として。執
J17_0098B22: 務年月をへるといへ共。時國。廳官として。これを
J17_0098B23: 蔑如にして面謁せざる遺恨なり。時に勢至丸。九歳
J17_0098B24: にして。其難をのがれて是を見給ふに。敵は定明也
J17_0098B25: と見給ひて。小矢を以て。暗き所よりこれを射る。
J17_0098B26: あやまたず。定明が目の間に射たてたり。此疵をし
J17_0098B27: るしとして。あらはるべき事疑なきによりて。彼定
J17_0098B28: 明逐電して歸りいらず。これによりて小矢兒と名付。
J17_0098B29: 見聞の諸人感歎せずといふ事なし。
J17_0098B30: 四 臨終の事
J17_0098B31: 時國。深く疵をかうぶりて。今はかぎりに成ければ。
J17_0098B32: 九歳成勢至丸を呼云。我は此疵にて身まかりなんと
J17_0098B33: す。但いささかも敵人をうらむる事なかれ。是前世
J17_0098B34: の報ひ也。更に一世の事に非ず。獨り此遺恨を思は

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