浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0072A01: | 夫が鋤をふむ、念佛もて田歌にし、織女がいとをひ |
J17_0072A02: | く、念佛をもつてたてぬきにし、鈴ならす驛路には、 |
J17_0072A03: | 念佛をもつて鳥に擬し、ふなばたをただく海上には、 |
J17_0072A04: | 念佛をもつて魚をつり、雪月花をみる人は、西樓に |
J17_0072A05: | めをかけ、琴詩酒のともがらは、にしの枝のなしを |
J17_0072A06: | をる。ちなみに、彌陀をもてあがめざるをば、瑕瑾 |
J17_0072A07: | とし、珠數をもてくらざるをば恥とす。是以、花族 |
J17_0072A08: | 英才といへども、念佛せざるをばおとしめ、乞匃非 |
J17_0072A09: | 人といへども、念佛するをばもてなす。故に八功德水 |
J17_0072A10: | のこえには、念佛のはちすいけにみち、三尊來迎の |
J17_0072A11: | いとなみは、紫臺をさしをくひまもなし。しかれば |
J17_0072A12: | 我等が念佛せざるは、かの池の荒廢也。我等が欣求 |
J17_0072A13: | せざるは、其國のうれへなり。國のにぎほい、佛の |
J17_0072A14: | たのしみ、念佛を以、基とし、人のねがひ、我がの |
J17_0072A15: | ぞみ、念佛をもてさきとし、仍、當座愚昧、公請に |
J17_0072A16: | つかへて還る夜は、念佛を唱て枕とし、私宅をいで |
J17_0072A17: | でわしるひは、極樂を念じて車をはす。これ上人の |
J17_0072B18: | 敎戒、過去の宿善にあらずやとて、鼻をかみて、こ |
J17_0072B19: | ゑむせび、舌をまきて、とどこほるきざみ、法主な |
J17_0072B20: | みだをながし、聽衆、袖をしぼりて、悉念佛門にな |
J17_0072B21: | びきて、併上人のすすめにかなふ、住侶八十四人、 |
J17_0072B22: | 面面に上人の興隆をよろこびて、一山のため、萬代 |
J17_0072B23: | のかたみ、如何でか、其廣恩を報ぜん。昔、戒成皇 |
J17_0072B24: | 子、金泥の大般若供養の砌、山上の草木、ことごと |
J17_0072B25: | くなびきて、南なるは北にふし、西なるは東になみ |
J17_0072B26: | よりし。西基の松いまに西谷に侍り。其谷を上人御 |
J17_0072B27: | 經迴のあひだ、迴向したてまつりて、なつみ、水く |
J17_0072B28: | むわづらひなく、このみをひろい、つまきをこるた |
J17_0072B29: | よりとあるべきよし申て、いくほどなくして、歸京 |
J17_0072B30: | のよし聞えければ、一山なごりををしみて、九重の |
J17_0072B31: | 雲におくりたてまつる。 |
J17_0072B32: | 龍顏逆鱗のいましめをやめて、烏頭變毛の宣下をか |
J17_0072B33: | ぶり給しより、勝尾に隱居ののち、鳳城に還歸ある |
J17_0072B34: | べきよし、太上天皇の院勅をうけ給はらしめ給けれ |