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J2380 四巻伝 耽空 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0072A01: 夫が鋤をふむ、念佛もて田歌にし、織女がいとをひ
J17_0072A02: く、念佛をもつてたてぬきにし、鈴ならす驛路には、
J17_0072A03: 念佛をもつて鳥に擬し、ふなばたをただく海上には、
J17_0072A04: 念佛をもつて魚をつり、雪月花をみる人は、西樓に
J17_0072A05: めをかけ、琴詩酒のともがらは、にしの枝のなしを
J17_0072A06: をる。ちなみに、彌陀をもてあがめざるをば、瑕瑾
J17_0072A07: とし、珠數をもてくらざるをば恥とす。是以、花族
J17_0072A08: 英才といへども、念佛せざるをばおとしめ、乞匃非
J17_0072A09: 人といへども、念佛するをばもてなす。故に八功德水
J17_0072A10: のこえには、念佛のはちすいけにみち、三尊來迎の
J17_0072A11: いとなみは、紫臺をさしをくひまもなし。しかれば
J17_0072A12: 我等が念佛せざるは、かの池の荒廢也。我等が欣求
J17_0072A13: せざるは、其國のうれへなり。國のにぎほい、佛の
J17_0072A14: たのしみ、念佛を以、基とし、人のねがひ、我がの
J17_0072A15: ぞみ、念佛をもてさきとし、仍、當座愚昧、公請に
J17_0072A16: つかへて還る夜は、念佛を唱て枕とし、私宅をいで
J17_0072A17: でわしるひは、極樂を念じて車をはす。これ上人の
J17_0072B18: 敎戒、過去の宿善にあらずやとて、鼻をかみて、こ
J17_0072B19: ゑむせび、舌をまきて、とどこほるきざみ、法主な
J17_0072B20: みだをながし、聽衆、袖をしぼりて、悉念佛門にな
J17_0072B21: びきて、併上人のすすめにかなふ、住侶八十四人、
J17_0072B22: 面面に上人の興隆をよろこびて、一山のため、萬代
J17_0072B23: のかたみ、如何でか、其廣恩を報ぜん。昔、戒成皇
J17_0072B24: 子、金泥の大般若供養の砌、山上の草木、ことごと
J17_0072B25: くなびきて、南なるは北にふし、西なるは東になみ
J17_0072B26: よりし。西基の松いまに西谷に侍り。其谷を上人御
J17_0072B27: 經迴のあひだ、迴向したてまつりて、なつみ、水く
J17_0072B28: むわづらひなく、このみをひろい、つまきをこるた
J17_0072B29: よりとあるべきよし申て、いくほどなくして、歸京
J17_0072B30: のよし聞えければ、一山なごりををしみて、九重の
J17_0072B31: 雲におくりたてまつる。
J17_0072B32: 龍顏逆鱗のいましめをやめて、烏頭變毛の宣下をか
J17_0072B33: ぶり給しより、勝尾に隱居ののち、鳳城に還歸ある
J17_0072B34: べきよし、太上天皇の院勅をうけ給はらしめ給けれ

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