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J2380 四巻伝 耽空 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0069A01: 土佐國。しかは侍けれども、月輪の禪定殿下の御沙
J17_0069A02: 汰として、法性寺の小御堂に逗留、同三月十六日、
J17_0069A03: 都を出給。信濃國角張成阿彌陀佛、力者の頭領とし
J17_0069A04: て、總て我もわれもと參勤。六十餘人
J17_0069A05: 力者小松殿へ參勤の圖
J17_0069A06: この次第をみる人人、なげきかなしみければ、かれ
J17_0069A07: らをいさめむがために、驛路は是大聖のゆくところ。
J17_0069A08: 漢には一行闍梨、日本には伇行者。謫所は又權化の
J17_0069A09: すむ砌也。震旦には白樂天、我朝には菅丞相也。在
J17_0069A10: 纒出纒皆火宅也。眞諦俗諦しかしながら水驛也。爰
J17_0069A11: 角張者、俗姓は早いでにき。王家を守多田の苗裔、
J17_0069A12: 法家に始て入。朝敵を拉伊州の玄孫なれども、本師
J17_0069A13: 上人に從て奴と也、僕となれり。故盡力輿を舁、同
J17_0069A14: 採花汲水の伇をいとはず、捨身給仕、兼朝粥非時の
J17_0069A15: 膳をいとなむ。
J17_0069A16: 同日、大納言律師公全西國へながされ給けるは、律
J17_0069A17: 師の船、さきに出けれども、上人、くだらせ給とき
J17_0069B18: きて、しばらくおさへて、上人の船にのりうつりて、
J17_0069B19: 律師、一目をみあげて、上人の膝に、かしらをかた
J17_0069B20: ぶけて、なくこゑ天をひびかすといへども、上人は
J17_0069B21: 涙をもたてず、念佛しておはしけるほどに、律師の
J17_0069B22: 船より、とくとくと申ければ、いよいよなごりをお
J17_0069B23: しみながら、本船にのりうつり給にけり。
J17_0069B24: 遠流の首途の圖
J17_0069B25: 室泊につき給ければ、君だちまいり侍けり。むかし、
J17_0069B26: 小松天皇、八人の姬宮を、七道につかはして、君の
J17_0069B27: 名をとどめ給中に、天王寺別當僧行尊拜堂のために
J17_0069B28: くだられける日、江口、神崎の君達、御船ちかく、
J17_0069B29: ふねをよせける時、僧のふねに、みぐるしくやと申
J17_0069B30: ければ、神歌をうたひいだし侍ける。
J17_0069B31: うろちよりむろちにかよふ釋迦たにも羅睺らかは
J17_0069B32: ははありとこそきけ。
J17_0069B33: と打いだし侍ければ、さまざまの纒頭し給ける。
J17_0069B34: 又をなじきとまりの長者、老病にふして、最後に今

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