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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0015A01: の姓名源元彥を賜り。遠流の宣旨をくだされければ。
J17_0015A02: 上人の勸化をあふぐ道俗貴賤皆なげきかなしみあへ
J17_0015A03: るに。上人は感悅の色ましまして。源空が遠流を蒙
J17_0015A04: こと。邊土の化縁すでに熟せり。誠によろこぶ所な
J17_0015A05: り。普萬機を敎化して。念佛門に入しめんとぞ仰せ
J17_0015A06: られける。慈悲誓願の色。外に顯れて。哀にたふと
J17_0015A07: かりけり。月輪の禪定殿下。しばらく御離別の恨を
J17_0015A08: 息んが爲に。法性寺の小御堂に。上人を一夜逗留た
J17_0015A09: てまつられけり。上人の給はく。會者定離は常のな
J17_0015A10: らひ。今はじめたるにあらず。何ぞ深歎んや。宿縁
J17_0015A11: 空からずば。同一蓮に坐せん。淨土の再會甚近にあ
J17_0015A12: り。今の別は暫の悲み。春の夜の夢のごとし。誹謗
J17_0015A13: ともに縁として。先に生て後を導ん。引攝縁はこれ
J17_0015A14: 淨土の樂なり。夫現生すら猶もて疎からず。同名號
J17_0015A15: を唱へ。同一光明の中にありて。同聖衆の護念を蒙
J17_0015A16: る。同法尤親し。愚に疎と思食べからず。南無阿彌
J17_0015A17: 陀佛と唱給へば。住所は隔といへども。源空に親し
J17_0015B18: とす。源空も南無阿彌陀佛と唱たてまつるが故な
J17_0015B19: り。念佛を縡とせざる人は。肩を並膝を與といへど
J17_0015B20: も。源空に疎かるべし。三業皆異なるが故なりとの
J17_0015B21: 給ば。禪定殿下悲哀心を迷し。一言もの給はざりけ
J17_0015B22: り。
J17_0015B23: 同三月十六日に。法性寺を立て配所に趣給ふ。配所
J17_0015B24: は讚岐國小松の庄なり。斯乃門弟住蓮安樂不善の咎とて。
J17_0015B25: 吹毛の讒言によりて。罪なき上人を流刑に行れけり。
J17_0015B26: 凡讒人の訴に依て左遷せられし賢哲。上代ためしな
J17_0015B27: きにあらず。吾朝には役行者。菅丞相。異國には一
J17_0015B28: 行阿闍梨。白樂天。これ皆罪なくして。謫所にすみ
J17_0015B29: 給へり。夫權化の善巧は。凡智測難し。信謗縁を結
J17_0015B30: び。違順益を蒙る。上人配所に趣給へば。帝都は闇
J17_0015B31: に燈を失しがごとく。邊土は盲の明を得るに似たり。
J17_0015B32: 洛陽は悲を含。田舍は喜を懷。悲ても念佛を唱。喜
J17_0015B33: もて名號を稱す。悲喜倶に善を勸。大權の化益誠に
J17_0015B34: 巧なりと。たふとかりけり。

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