ウィンドウを閉じる

J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0016A01: 同八月。勅免の宣旨をくだされしかども。なほ洛中
J17_0016A02: の往還をゆるされざりしかば。攝津國勝尾寺に。し
J17_0016A03: ばらく住給。すでに五箇年を經て。華洛に還歸ある
J17_0016A04: べきよしの宣旨を蒙り。權中納言藤原光親卿の奉行
J17_0016A05: として建曆元年辛未十二月十二日に帝都に歸り入て。
J17_0016A06: 東山大谷淨室に居住し給ふ。昔釋尊忉利天にして九旬安
J17_0016A07: 居の説法終て後。上天の雲より來下し給ふ時。人天
J17_0016A08: 大會歡喜して供養したてまつりしがごとく。今上人
J17_0016A09: 南海の波をさかのぼり給へば。道俗男女。各あらそ
J17_0016A10: ひて供養をのべける。羣參のともがら。一夜の中を
J17_0016A11: 算るに。一千餘人ときこえき。閑居の室なりといへ
J17_0016A12: ども。貴賤賢愚來集て法を聞こと。猶盛なる市のご
J17_0016A13: とし。利益倍多して。信仰日に新なり。
J17_0016A14: 第十四 臨終念佛往生門
J17_0016A15: 建曆二年壬申正月二日より。上人老病やうやく興起し
J17_0016A16: て日頃不食の所勞。殊に增氣し給へり。凡此二三年
J17_0016A17: は。耳目彌朦昧なりしかども。往生の期ちかづきけ
J17_0016B18: れば。二根明利にして。色を見聲を聞給ふこと。も
J17_0016B19: つばら盛年にたがはず。見聞の道俗。奇異の思をな
J17_0016B20: す。唯高聲の念佛相續勇猛にして。其中間には更に
J17_0016B21: 餘言をまじゑず。ひとへに淨土の事を談じ。睡眠の
J17_0016B22: 時にも猶直念佛を唱給へり。有時上人の給はく。高
J17_0016B23: 聲に念佛を唱へよ。阿彌陀佛の來給へり。南無阿彌
J17_0016B24: 陀佛と唱者は。一人としても。極樂に往生せずとい
J17_0016B25: ふ事なしとして。念佛の功德をほめ給へり。二十四
J17_0016B26: 日の酉時より二十五日の巳時に至までは。高聲念佛
J17_0016B27: 殊更に勇猛なり。五六人の僧。番を結て助音するに
J17_0016B28: 助音は苦むといへども。暮齡病惱の御身敢て退屈し
J17_0016B29: 給はず。道俗隨喜し。傍人驚讚せり。午時に至て念
J17_0016B30: 佛の御聲やうやう幽にして。高聲に時時唱給ふ。午
J17_0016B31: 刻の正中に。年來所持の慈覺大師の九條の袈裟を著
J17_0016B32: し。頭北面西にして。光明遍照。十方世界。念佛衆
J17_0016B33: 生。攝取不捨。南無阿彌陀佛と誦して。睡がごとく
J17_0016B34: して息絶たまひぬ。音聲止て後。猶念佛を唱給ふと

ウィンドウを閉じる