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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0012A01: 上人。鸚鵡の囀が如に各各の疑難を會釋し給へば。
J17_0012A02: 諸宗の明匠舌を卷て言ことなく。靜なること春の日
J17_0012A03: に似たり。爾時上人。聖道の諸宗は。理ふかく解微
J17_0012A04: にして。證を得ること甚難し。此則世くだり人愚に
J17_0012A05: して。機敎相違すれば。其修行に堪ず。ながく苦海
J17_0012A06: に沈淪して。いまだ涅槃の岸に到らず。淨土の一門
J17_0012A07: は解し易く行し易ければ。得脱最速なり。愚鈍下智
J17_0012A08: を捨ざれば。庸學なほ勇あり。破戒重罪を簡ざれば。
J17_0012A09: 惡人なほ生る。行住坐臥を別ざれば。念念に常に行
J17_0012A10: じ。時處諸縁を論ぜざれば。散亂猶唱ふ。其止惡を
J17_0012A11: いへば。念時日の三懺悔を許せり。其修善をいへば
J17_0012A12: 一念十念猶生ると勸たり。和尚の釋禮讚に唯有念佛
J17_0012A13: 蒙光攝。當知本願最爲強。眞形光明遍法界。蒙
J17_0012A14: 光觸者心不退なりといへり。攝取不捨の光益は。念
J17_0012A15: 念稱名の德をさづく。尤これを信ずべし。尤これを
J17_0012A16: 勤べしと。一日一夜詞を盡て。淨敎を講説し給へば。
J17_0012A17: 聽聞の道俗。或は涙を流て仰信し。或は聲を擧て歡
J17_0012B18: 喜す。其中に坊主法眼顯眞は。雙眼より涙を流し。
J17_0012B19: 佛前に踊立て。自香爐をとり。旋遶行道して。高聲
J17_0012B20: に念佛し給へば。南北の明匠三百餘人。異口同音に
J17_0012B21: 念佛を修行すること。三日三夜間斷なし。其外の參
J17_0012B22: 禮結縁の聽聞衆は。其數を知らざりき。爾しより
J17_0012B23: 以降。處處の道場。悉佛名を唱。童子の戲にも併念
J17_0012B24: 佛を口遊とす。其後法眼顯眞は。召出されて。天台
J17_0012B25: の座主に補せらる。叡山の高僧常倫に超出せり。此
J17_0012B26: 等の明匠。皆上人に歸し給ふ。又座主顯眞。十二人
J17_0012B27: の時衆を定おきて。不斷念佛をおこなひ給ふ。一向
J17_0012B28: に稱名相續して。餘行をまじへず。其行を勤始てよ
J17_0012B29: り。今に退轉なし。
J17_0012B30: 有時上人。靈山寺にして。三七日夜の不斷念佛を勤
J17_0012B31: 行し給に。燈なくして光明あり。第五の夜にいたり
J17_0012B32: て。行道するに。勢至菩薩同列に交立給けり。時衆
J17_0012B33: 夢のごとく幽に此を拜して。上人にこのよしを申
J17_0012B34: に。爾ることも侍らんと答給ふ。謹で此瑞相を讚嘆

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