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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0010A01: 慚。且は勅命を恐。然ば則一旦の宣旨に隨はんより
J17_0010A02: は。永辭せんにはしかずとて。固辭退申されけり。行
J17_0010A03: 隆朝臣その志の堅固なるをみて。ことの由を奏しけ
J17_0010A04: れば。もし門徒の中に。其器量の者あらば。擧申べ
J17_0010A05: きよし。重て仰下されけるによて。上人。醍醐の俊
J17_0010A06: 乘房重源を召て。勅に應じて參内せしむ。法皇後白川
J17_0010A07: 喜給ひて。遂に大勸進の職に補せられにけり。上人
J17_0010A08: 宣旨を辭して。偏に稱名の行を興し自利利他。唯專
J17_0010A09: 修念佛のみにして。寸暇を惜給へり。
J17_0010A10: 有時鎭西の聖光房と聖覺と但兩人。上人の御前に
J17_0010A11: て。淨土の法門聽聞しける時。聖光房。尋申て云。
J17_0010A12: 仰て本願を信じ。實に往生を願ずれども。妄念鎭に
J17_0010A13: 起て止難。散亂彌倍て靜ならず。此條如何が候や。
J17_0010A14: 上人答給はく。妄念餘念をもかへりみず。散亂不淨
J17_0010A15: をもいはず。唯口に名號を唱よ。もし能稱名すれば。
J17_0010A16: 佛名の德として妄念自止。散亂自靜り。三業自調て
J17_0010A17: 願心自發なり。然れば願生の心の少にも南無阿彌陀
J17_0010B18: 佛。散亂の增時も南無阿彌陀佛。妄念の起時も南無
J17_0010B19: 阿彌陀佛。善心の起時も南無阿彌陀佛。不淨の時も
J17_0010B20: 南無阿彌陀佛。淸淨の時も南無阿彌陀佛。三心の闕
J17_0010B21: たるにも南無阿彌陀佛。三心具するにも南無阿彌陀
J17_0010B22: 佛。三心現起するにも南無阿彌陀佛。三心成就する
J17_0010B23: にも南無阿彌陀佛。これすなはち決定往生の方便な
J17_0010B24: り。心腑に納て忘るることなかれ。聖覺尋て云。今
J17_0010B25: の御義のごときは。三心を闕といへども。唯佛名を
J17_0010B26: 唱れば。名號の德として。三心發得して。往生すべ
J17_0010B27: しと聞へ候。然に和尚。虚假心の行人は。晝夜十二
J17_0010B28: 時に。急に走急に作こと。頭然を拂がごとく。勇猛
J17_0010B29: に勤行すとも。往生不可なりと。定判し給へり。彼
J17_0010B30: 此の御義如何が合せんや。聖光房の云。予が所存も
J17_0010B31: 亦爾りと。上人答て云。此不審は今の所談にあらず。
J17_0010B32: これは本より三心を具すれども。歷縁對境の時に。
J17_0010B33: 如法ならざる。其治方を述なり。所引の和尚の解釋
J17_0010B34: は一向に三心の闕たるを嫌。意趣もとも巧なり。是

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