浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J15_0521A01: | 業をわが得る理りやはある 答業を造りては。三品 |
J15_0521A02: | の報ひあり。一には異熟果。これ正しき報ひ唯見づ |
J15_0521A03: | からのみ身の中に受く。謂く善によりて樂しく惡に |
J15_0521A04: | よりて苦しきなり。二には等流果。謂く此世に善を |
J15_0521A05: | 造れば後にも善を造り。今日惡を造りて後にまた惡 |
J15_0521A06: | 業を造るなり。三には增上果。これは善を造りて善 |
J15_0521A07: | き國王に逢ひ。善知識に遇ひて。人の上の事により |
J15_0521A08: | ても善き事の來るなり。惡を造りては閻魔獄卒に遇 |
J15_0521A09: | ひ。邪魔外道に伴ふ。しかれば子の罪を親の受け。 |
J15_0521A10: | 衆生の苦に菩薩の代り給ふ。皆增上縁と成て增上果 |
J15_0521A11: | を牽く理りなり。自業自得果といは異熟因と成て異 |
J15_0521A12: | 熟果を得る方をいふ。佛法の中にはかならず因縁を |
J15_0521A13: | 具へて何事をも成す也。因と縁とを辨ふべし。譬へ |
J15_0521A14: | ば木の中より火を出せども。かならず人の鑽るによ |
J15_0521A15: | り。玉の水を取る。かならず月の光りを待つ。爾れは |
J15_0521A16: | 種となる方を因といふ。木の中より火を出すが如し。 |
J15_0521A17: | 自の業をばみづから報ゆとはこれをいふ。異物の助 |
J15_0521B18: | るを縁といふ。人の火をきり出すが如し。人の子の |
J15_0521B19: | 親をすくふこれなり。因によりては。異熟の果と等 |
J15_0521B20: | 流の果とを得。縁となる方は增上の界を得るなり。 |
J15_0521B21: | かくいひつれば違ふ事なし。 |
J15_0521B22: | 問人の父母の恩はいかばかりぞや 答經に云く。父 |
J15_0521B23: | の恩の高き事は山の如し。母の恩の深き事は海の如 |
J15_0521B24: | しといへり。又いつくしひ思ふ恩ならぶべきもなく。 |
J15_0521B25: | 懷き養ふ德また量もなしといへり。又經に人生れ墮 |
J15_0521B26: | て後。三つ子になるまでに飮める乳房の數は。一百 |
J15_0521B27: | 八十石なりといへり。舊き人の持たるとへ斗は小さ |
J15_0521B28: | しとそいひたる。其程にて六十石と計へたり。其いふ |
J15_0521B29: | が如きならば。一年には二十石にぞ當りたる。しかれ |
J15_0521B30: | ば二親の中には母の恩はいよいよ深しといふ。設ひ |
J15_0521B31: | 母なからましかは。父そやしなはまし。昔子を産み |
J15_0521B32: | 置て失にける人の子を。父のすべき方なく悲ひて。 |
J15_0521B33: | 負ひ懷きしける程に。その父の乳ぶさあゑにけり。 |
J15_0521B34: | 其乳をふくめ育ひてけり。これ父の悲ひ。母に劣ら |