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J2190 菩提心集 珍海 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J15_0521A01: 業をわが得る理りやはある 答業を造りては。三品
J15_0521A02: の報ひあり。一には異熟果。これ正しき報ひ唯見づ
J15_0521A03: からのみ身の中に受く。謂く善によりて樂しく惡に
J15_0521A04: よりて苦しきなり。二には等流果。謂く此世に善を
J15_0521A05: 造れば後にも善を造り。今日惡を造りて後にまた惡
J15_0521A06: 業を造るなり。三には增上果。これは善を造りて善
J15_0521A07: き國王に逢ひ。善知識に遇ひて。人の上の事により
J15_0521A08: ても善き事の來るなり。惡を造りては閻魔獄卒に遇
J15_0521A09: ひ。邪魔外道に伴ふ。しかれば子の罪を親の受け。
J15_0521A10: 衆生の苦に菩薩の代り給ふ。皆增上縁と成て增上果
J15_0521A11: を牽く理りなり。自業自得果といは異熟因と成て異
J15_0521A12: 熟果を得る方をいふ。佛法の中にはかならず因縁を
J15_0521A13: 具へて何事をも成す也。因と縁とを辨ふべし。譬へ
J15_0521A14: ば木の中より火を出せども。かならず人の鑽るによ
J15_0521A15: り。玉の水を取る。かならず月の光りを待つ。爾れは
J15_0521A16: 種となる方を因といふ。木の中より火を出すが如し。
J15_0521A17: 自の業をばみづから報ゆとはこれをいふ。異物の助
J15_0521B18: るを縁といふ。人の火をきり出すが如し。人の子の
J15_0521B19: 親をすくふこれなり。因によりては。異熟の果と等
J15_0521B20: 流の果とを得。縁となる方は增上の界を得るなり。
J15_0521B21: かくいひつれば違ふ事なし。
J15_0521B22: 問人の父母の恩はいかばかりぞや 答經に云く。父
J15_0521B23: の恩の高き事は山の如し。母の恩の深き事は海の如
J15_0521B24: しといへり。又いつくしひ思ふ恩ならぶべきもなく。
J15_0521B25: 懷き養ふ德また量もなしといへり。又經に人生れ墮
J15_0521B26: て後。三つ子になるまでに飮める乳房の數は。一百
J15_0521B27: 八十石なりといへり。舊き人の持たるとへ斗は小さ
J15_0521B28: しとそいひたる。其程にて六十石と計へたり。其いふ
J15_0521B29: が如きならば。一年には二十石にぞ當りたる。しかれ
J15_0521B30: ば二親の中には母の恩はいよいよ深しといふ。設ひ
J15_0521B31: 母なからましかは。父そやしなはまし。昔子を産み
J15_0521B32: 置て失にける人の子を。父のすべき方なく悲ひて。
J15_0521B33: 負ひ懷きしける程に。その父の乳ぶさあゑにけり。
J15_0521B34: 其乳をふくめ育ひてけり。これ父の悲ひ。母に劣ら

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