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J1410 拾遺和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0652A01: すくわたらせ給ふにて候。そのゆへは。西國へくた
J09_0652A02: らんともおもはぬ人に。船をとらせて候はんに。ふね
J09_0652A03: の水にうかふ事なしとはうたかひ候はねとも。當時
J09_0652A04: さしているましけれは。いたくうれしくも候ましき
J09_0652A05: そかし。さてかたきの城なとにこめられて候はんが。
J09_0652A06: からくしてにけてまかり候はんみちに。おほきなる
J09_0652A07: 河海なとの候て。わたるへきやうもなからんおりお
J09_0652A08: やのもとよりふねをまうけてむかへにたびたらん
J09_0652A09: は。さしあたりていかはかりかうれしく候へき。こ
J09_0652A10: れがやうに。貪瞋煩惱のかたきにしはられて。三界
J09_0652A11: の樊籠にこめられたるわれらを。彌陀悲母の御心さ
J09_0652A12: しふかくして。名號の利釼をもちて生死のきつなを
J09_0652A13: きり。本願の要船を苦海のなみにうかへて。かのき
J09_0652A14: しにつけ給ふへしとおもひ候はんうれしさは。歡喜
J09_0652A15: のなみたたもとをしほり。渴仰のおもひきもにそむ
J09_0652A16: へきにて候。せめては身の毛いよたつほとにおもふ
J09_0652A17: へきにて候を。のさにおほしめし候はんは。ほいな
J09_0652B18: く候へとも。それもことはりにて候。つみつくる事
J09_0652B19: こそをしへ候はねとも。心にもそみておほえ候へ。
J09_0652B20: そのゆへは。無始より此かた六趣にめくりし時も。
J09_0652B21: かたちはかはれとも心はかはらすして。いろいろさ
J09_0652B22: まさまつくりならひて候へは。いまもうゐうゐしか
J09_0652B23: らすやすくはつくられ候へ。念佛申て往生せはやと
J09_0652B24: おもふ事は。此たひはしめてわつかにききえたる事
J09_0652B25: にて候へは。きとは信せられ候はぬ也。そのうへ人
J09_0652B26: の心は頓機漸機とて二しなに候也。頓機は。ききて
J09_0652B27: やかてさとる心にて候。漸機は。やうやうさとる心
J09_0652B28: にて候也。ものまうてなとをし候に。あしはやき人
J09_0652B29: は一時にまいりつくところへ。あしをそきものは日
J09_0652B30: くらしにもかなはぬ樣には候へとも。まいる心た
J09_0652B31: にも候へは。つゐにはとけ候やうに。ねかふ御心たに
J09_0652B32: わたらせ給ひ候はは。とし月をかさねても。御信心
J09_0652B33: もふかくならせおはしますへきにて候。
J09_0652B34: 一日ころ念佛申せとも。臨終に善知識にあはすは。往

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