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J1410 拾遺和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0622A01: ここにととまりてわが供養をうけ給へ。そののちた
J09_0622A02: からをたてまつらんといふ。太子七日をへてたまを
J09_0622A03: 得給ひぬ。龍神そこよりをくりたてまつる。すなは
J09_0622A04: ち本國のきしにいたりぬ。爰にもろもろの龍神なげ
J09_0622A05: きていはく。このたまは海中のたからなり。なをと
J09_0622A06: り返してぞよかるへきとさだむ。海神人になりて太
J09_0622A07: 子の御まへにきたりていはく。君世にまれなるたま
J09_0622A08: をえ給へりときく。とくわれに見せ給へといふ。太
J09_0622A09: 子これを見せ給ふに。うばひとりてうみへいりぬ。
J09_0622A10: 太子なげきてちかひていはく。なんぢもしたまを返
J09_0622A11: さずんは。うみをくみほさんといふ。海神いででわ
J09_0622A12: らひていはく。なんぢはもともおろかなる人かな。
J09_0622A13: そらの日をはをとしもしてん。はやきせをばとどめ
J09_0622A14: もしてん。うみのみつをばつくすへからすといふ。
J09_0622A15: 太子の給はく。恩愛のたへかたきをもなをととめん
J09_0622A16: とをもふ。生死のつくしがたきをもなをつくさんと
J09_0622A17: おもふ。いはんやうみの水おほしといふともかぎり
J09_0622B18: あり。若この世にくみつくさすは。世世をへてもか
J09_0622B19: ならすくみつくさんとちかひて。かいのからをとり
J09_0622B20: てうみの水をくむ。ちかひの心まことなるがゆへ
J09_0622B21: に。もろもろの天人ことことくきたりて。あまのは
J09_0622B22: ころものそてにつつ見て。鐵圍山の外にくみをく。
J09_0622B23: 太子一度二度かいのからをもてくみ給ふに。海水十
J09_0622B24: 分が八分はうせぬ。龍王さはきあはてて。わがすみ
J09_0622B25: かむなしくなりなんとすとわびてたまを返したてま
J09_0622B26: つる。太子これをとりて都に返りて。もろもろのた
J09_0622B27: からをふらして。閻浮提のうちにたからをふらさざ
J09_0622B28: るところなし。くるしきをしのぎて退せさりしかは。
J09_0622B29: これを精進波羅蜜といふ。むかしの太子は萬里のな
J09_0622B30: みをしのぎて。龍王の如意寳珠をえ給へり。いまの
J09_0622B31: われらは二河の水火をわけて。彌陀本願の寶珠を得
J09_0622B32: たり。かれは龍神のくひしがためにうばはれ。これは
J09_0622B33: 異學異見のためにうばはる。かれはかいのからをも
J09_0622B34: て大海をくみしかは。六欲四禪の諸天きたりておな

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