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J1400 和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0584A01: 事は。すべて佛法にいはざるところ也。たとへは人
J09_0584A02: のおやの。一切の子をかなしむに其中によき子もあ
J09_0584A03: り。あしき子もあり。ともに慈悲をなすといへとも。
J09_0584A04: 惡を行ずる子をは目をいからかし。杖をささげて。
J09_0584A05: いましむるがことし。佛の慈悲のあまねき事をきき
J09_0584A06: ては。つみをつくれとおほしめすといふおもひをな
J09_0584A07: さは。佛の慈悲にももれぬへし。惡人まてをもすて
J09_0584A08: 給はぬ本願としらんにつけては。いよいよ佛の知見
J09_0584A09: をははづへし。かなしむへし。父母の慈悲あればと
J09_0584A10: て。父母のまへにて惡を行ぜんに。その父母よろこ
J09_0584A11: ぶへしや。なげきなからすてず。あはれみながらに
J09_0584A12: くむ也。佛も又もてかくのことし
J09_0584A13: 問ていはく。凡夫は心に惡をおもはずといふ事なし。
J09_0584A14: この惡を外にあらはささるは。佛をばはぢすして。人
J09_0584A15: 目をはばかるといふ物なり。これは心のままにふる
J09_0584A16: まふへしや
J09_0584A17: 答ていはく。人の歸依を得むとおもひて。外をかざ
J09_0584B18: らんはとがあるかたもやあらん。惡をしのばんがた
J09_0584B19: めに。たとひ心におもふとも。ほかまではあらはさ
J09_0584B20: じとおもひて。をさへん事は。すなはち佛に耻る心
J09_0584B21: 也。とにもかくにも惡をしのびて。念佛の功をつむ
J09_0584B22: へき也。習ひさきよりあらざれは。臨終正念もかた
J09_0584B23: し。常に臨終のおもひをなして。臥ごとに十念をと
J09_0584B24: なふへし。されはねてもさめてもわするる事なかれ
J09_0584B25: といへり。おほかたは世間も出世も。道理はたがは
J09_0584B26: ぬ事にて候也。心ある人は。父母あはれみ。主君も
J09_0584B27: はこくむにしたがひて惡事をはしりぞき。善事をは
J09_0584B28: このまんとおもへり。惡人をもすて給はぬ本願とき
J09_0584B29: かんにも。まして善人をは。いかばかりかよろこび給
J09_0584B30: はんと思ふへき也。一念十念をもむかへ給ふときか
J09_0584B31: は。いはんや百念千念をやとおもひて。心のをよひ。
J09_0584B32: 身のはげまれん程ははげむへし。さればとてわが身
J09_0584B33: の器量のかなはざらんをばしらす。佛の引接をはう
J09_0584B34: たがふへからす。たとひ七八十のよはひを期すとも。

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