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J1400 和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0583A01: みつくる。しかるにこれを信じこれを貴ひて。佛を
J09_0583A02: たのみ往生を志す。これひとへに宿善のしからしむ
J09_0583A03: る也。ただ今生のはげみにあらす。往生すへき期の
J09_0583A04: いたれる也とたのもしくよろこぶへし。かやうの事
J09_0583A05: を。おりにしたがひ。事によりておもふべき也
J09_0583A06: 問ていはく。かやうの愚癡の身には聖敎をもみず。
J09_0583A07: 惡縁のみおほし。いかなる方法をもてか。わが心を
J09_0583A08: まもり。信心をももよほすべきや。
J09_0583A09: 答ていはく。そのやう一つにあらず。あるひは人の
J09_0583A10: 苦にあふをみて。三途の苦をおもひやれ。あるひは
J09_0583A11: 人のしぬるを見て。無常のことはりをさとれ。ある
J09_0583A12: ひは。つねに念佛してその心をはけませ。あるひは
J09_0583A13: つねによき友にあひて。心をはぢしめられよ。人の心
J09_0583A14: はおほく惡縁によりてあしき心のをこる也。されは
J09_0583A15: 惡縁をはさり。善縁にちかづけといへり。これらの
J09_0583A16: 方法ひとしなならず。時にしたがひてはからふへし
J09_0583A17: 問ていはく念佛の外の餘善をは。往生の業にあらず
J09_0583B18: とて。修すへからすといふ事あり。これはしかるべ
J09_0583B19: しや
J09_0583B20: 答ていはく。たとへは人のみちをゆくに。主人一人
J09_0583B21: につきて。おほくの眷屬のゆくがことし。往生の業
J09_0583B22: の中に念佛は主人也。餘の善は眷屬也。しからは餘
J09_0583B23: 善をきらふまではあるへからす
J09_0583B24: 問ていはく。本願は惡人をきらはねばとて。このみて
J09_0583B25: 惡業をつくる事はしかるへしや
J09_0583B26: 答ていはく。佛は惡人をすて給はねとも。このみて
J09_0583B27: 惡をつくる事。これ佛の弟子にはあらす。一切の佛
J09_0583B28: 法に惡を制せずといふ事なし。惡を制するに。かな
J09_0583B29: らずしもこれをととめ得ざるものは。念佛してその
J09_0583B30: つみを滅せよとすすめたる也。わが身のたへねはと
J09_0583B31: て。佛にとがをかけたてまつらん事は。おほきなる
J09_0583B32: あやまり也。わが身の惡をととむるにあたはずは。
J09_0583B33: ほとけ慈悲をすて給はすして。このつみを滅してむ
J09_0583B34: かへ給へと申へし。つみをはただつくるへしといふ

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