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J1400 和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0579A01: もき事は石のごとくなれとも。本願のふねにのりぬ
J09_0579A02: れは生死のうみにしづむ事なく。かならす往生する
J09_0579A03: 也。ゆめゆめわが身の罪業によりて本願の不思議を
J09_0579A04: うたがはせ給ふへからす。これを他力の往生とは申
J09_0579A05: 也。自力にて生死をいでんとするには。煩惱惡業を
J09_0579A06: 斷じつくして淨土にもまいり菩提にもいたるとなら
J09_0579A07: ふ。これは步よりけはしきみちをゆくがことし
J09_0579A08: 問ていはく。罪業をもけれとも。智惠の燈をもて煩
J09_0579A09: 惱のやみをはらふ事にて候なれは。かやうの愚癡の
J09_0579A10: 身には。つみをつくる事はかさなれとも。つくのふ
J09_0579A11: 事はなし。なにをもてこのつみをけすへしともおほ
J09_0579A12: えす候はいかん
J09_0579A13: 答ていはく。ただ佛の御詞を信じてうたかひなけれ
J09_0579A14: は。佛の御ちからにて往生する也。さきのたとへの
J09_0579A15: ごとく。ふねにのりぬれは。目しゐたるものも目あき
J09_0579A16: たるものもともにゆくがことし。智惠のまなこある
J09_0579A17: 者も。佛を念ぜされは願力にかなはす。愚癡のやみ
J09_0579B18: ふかきものも。念佛すれは願力に乘ずるなり。念佛
J09_0579B19: する者をは彌陀の光明をはなちてつねにてらして捨
J09_0579B20: 給はねは。惡縁にあはすして。必臨終に正念をえて
J09_0579B21: 往生する也。さらにわが身の智惠のありなしにより
J09_0579B22: て。往生の定不定をはさだむへからす。ただ信心の
J09_0579B23: ふかかるへき也
J09_0579B24: 問ていはく。世をそむきたる人は。ひとすぢに念佛
J09_0579B25: すれは往生も得やすき事也。かやうの身には。あし
J09_0579B26: たにもゆふへにも。いとなむ事は名聞。昨日も今日
J09_0579B27: もおもふ事は利養也。かやうの身にて申さん念佛は
J09_0579B28: いかか佛の御意にもかなひ候へきや
J09_0579B29: 答ていはく。淨摩尼珠といふ珠を。にこれる水に投れ
J09_0579B30: は。珠の用力にてその水きよくなるがことし。衆生の
J09_0579B31: 心はつねに名利にそみて。にごれる事がの水のごと
J09_0579B32: くなれとも。念佛の摩尼珠を投れは。心の水をのつか
J09_0579B33: らきよくなりて。往生をうる事は。念佛のちから也。
J09_0579B34: わが心をしづめ。このさわりをのぞきて。後念佛せよ

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