ウィンドウを閉じる

J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0237A01: 難しばしば起る内。御弟子の中に。一念義の邪立を
J09_0237A02: 芽せし故。南都北嶺よりは。專修念佛停廢の義を訴
J09_0237A03: 訟し。且つ御弟子。住蓮安樂の兩僧は。後鳥羽院熊
J09_0237A04: 野臨幸の御留守に。御許しもなき官女を剃髮せし故。
J09_0237A05: 還幸の後。佞臣種種に讒奏せしかば。弟子の罪を師
J09_0237A06: に負せて。既に七十五にならせ給へる大師を。配流
J09_0237A07: の罪に處し給ひぬ。其後漸く五ケ年を經て。建曆元
J09_0237A08: 年十一月廿日に勅許。御歸洛ありけれども。翌春正
J09_0237A09: 月二日より。日頃の御不食增氣し玉ひ。廿三日に至
J09_0237A10: りては。最早御臨末も遠からじと見ゆる故。御弟子
J09_0237A11: 勢觀上人の願によりて。記し給へる御遺訓なり。則
J09_0237A12: ち勢觀上人の傳に云。上人終焉の期近づき給て。勢
J09_0237A13: 觀房の云。念佛の安心年來御敎誡にあづかるといへ
J09_0237A14: ども。猶御自筆に肝要の御所存。一ふであそばされ
J09_0237A15: て給はりて。後の御かたみにそなへ侍らんと。申さ
J09_0237A16: れたりけれは。御筆をそめられける狀に云。もろこ
J09_0237A17: し我てうに。乃至ただ一向に念佛すべしと。云云まさしき
J09_0237B18: 御自筆の書なり。まことに末代の龜鏡にたれるもの
J09_0237B19: か。上人の一枚消息となづけて。世に流布するこれ
J09_0237B20: なりと。九卷傳に云。勢觀上人敢て披露せず。一期
J09_0237B21: の間。頸にかけて秘藏せられけるを。年來師檀の契
J09_0237B22: り淺からざりし。川合の法眼に語り聞へけるを。懇
J09_0237B23: 切に望み申ければ。授けられてより以來。世間に披
J09_0237B24: 露して。上人の一枚消息と云へるものなり。已上勢觀
J09_0237B25: 上人。斯く珍敬し給へるも。御自身の爲斗歟と云に。
J09_0237B26: 爾らず。大師御開宗の正義を。邪義黨の爲に擾され。
J09_0237B27: 末世の衆生の往生を。得遂ざらんことを嘆き憐み給よ
J09_0237B28: り發る。其證は。添書に云。門人邪義存人多上人滅
J09_0237B29: 後尚以猥異義依之雖病床臥給此一紙申請處也爲
J09_0237B30: 令不殘疑滯上人御自筆御判形令注置給處如
J09_0237B31: 件正月廿八日源智已上勢觀上人の御性質。至て篤實謹
J09_0237B32: 愼にして。御隨從も首尾十八年。偏に大師を釋尊の
J09_0237B33: 如く。敬ひ給へることなれば。御老年と云。餘寒の
J09_0237B34: 比と云。殊に御往生も旦夕と見ゆる。御病床にての

ウィンドウを閉じる