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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0238A01: ことなれば。さぞ御願ひもなされ苦るしく。御勞心な
J09_0238A02: されつらん。なれども。御弟子の中にさへ。成覺房
J09_0238A03: 幸西の。法本房行空の。善信房綽空のと云。無道の
J09_0238A04: 者が。大師の御義に背きて。邪義を立る故。御自身
J09_0238A05: の御破斥では。同し御弟子仲間のことなれば。角立し
J09_0238A06: て。愚者は法義に暗き故。邪正一决し難ければ。御
J09_0238A07: 勞れをば恐れながら。正義を傳へて衆生を助け度と
J09_0238A08: 云。有道の慈悲にむし立られて。師の病床の枕に近
J09_0238A09: づき。請しがたきを請し給へる。源智上人の御心の
J09_0238A10: 程を。思ひやり奉りて見よ。いかにつれなき心なり
J09_0238A11: とも。偖も難有御慈悲と。信受の心を生ぜずしては。
J09_0238A12: あられまじ云云。又大師は別して。生涯御弘通の正義
J09_0238A13: を。御在世の中よりはや。障礙をなす邪師あれば。
J09_0238A14: 滅後はさぞと御嘆の所へ。勢觀上人の御願ありしこと
J09_0238A15: なれば。喜びて御筆を染給ふ。されば師資符合の。
J09_0238A16: 御慈悲より起りたるが。此一枚起請文の縁起なり。
J09_0238A17: 爾れば。上に云如く。元祖大師。御自行化他成滿し
J09_0238B18: 給ひて。御臨末の要語。御遺屬の絶筆にして。淨宗
J09_0238B19: の蘊奧を示し。順次决定往生の。龜鑑に備へ玉へば。
J09_0238B20: 此御敎示に隨ふときは往生を遂げ。背けば輪廻を免
J09_0238B21: れず。苦樂浮沉の分れ目は。唯守ると背くとにて。
J09_0238B22: 差別するなり。されば。此得失の間。一つの事實を
J09_0238B23: 擧て示さば。或處に。居所も家名も所由ありてしるさず。二家の豪商あり
J09_0238B24: て。而も親類にて。兩家とも奢りを省き。貧人を惠
J09_0238B25: む家風なりしが。一家の方は。實子なくて養子なり
J09_0238B26: しかば。養父心を用ひて敎導する上に。兼て遺書を
J09_0238B27: 認め。家風を守りて。不正の商ひなどをは。痛く誡
J09_0238B28: めたりしに。養父の沒後遺書に背き。過奢放蕩にし
J09_0238B29: て。商ひの筋も不正がちなりしかば。家私さんざん
J09_0238B30: になりて。借金山をなせり。又一家の方は。至て謹
J09_0238B31: 愼篤實に。父祖の遺命を守り。家風をみださざりし
J09_0238B32: かば。次第に繁昌せり。爾るに彼背敎者に金子貸し
J09_0238B33: たる方より。守敎者の方へ申越しけるは。御親類某
J09_0238B34: へ。用立たる金子の證文へ。奧印なされ候樣にと。

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