ウィンドウを閉じる

J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0227A01: の眞珠のみ無し。是を不足に欲ひ。求め得が爲に。
J09_0227A02: 人を將て大海に赴き。險阻を凌き。艱難を歷て。乃
J09_0227A03: し寳渚に到り。身を刺して血を出し。油囊に入て海
J09_0227A04: 底に沈む。珠を胎る蛤。此血を聞て集り唼食ふ。即
J09_0227A05: ち囊を引擧。蛤の甲を割て。赤眞珠を取る。如是
J09_0227A06: する事。三年を經て。一珮量を得たり。彼同伴忽ち
J09_0227A07: 異念を起し。長者を井の中へ押落して。眞珠を奪て
J09_0227A08: 去る。時に長者方便を以て井を出て本國に歸り。彼
J09_0227A09: 同伴を探し尋て。珠を取還し。囊に入て。甕の中に
J09_0227A10: 藏す。而して二人の子生育し。眞珠の珮を出して此
J09_0227A11: を與ふ。二子共に玩ふ。父の長者問て云。此赤眞珠
J09_0227A12: は何れの處より出るやと。一兒の云。囊の中より出
J09_0227A13: つと。一兒の云。甕の中より生ずと。父聞て大ひに笑
J09_0227A14: ふ。母其笑ふ故を問ば。父答て云。吾れ數多の艱難
J09_0227A15: を歷て。漸く珠を採得たり。乃し其艱苦を經し事を
J09_0227A16: 委細に物語す。小兒等更に其本末を知ずして。唯に
J09_0227A17: 囊や甕の中より出たりと思へり。故に笑ふと云ふ。
J09_0227B18: 今も亦爾り。阿難只如來の成佛のみを見て。無數劫
J09_0227B19: の勤苦修行を知ず。是を以て容易き事と思へりと。
J09_0227B20: 已上譬喩經の説今此一紙御遺誓も亦爾り。祖父大師。十八歳
J09_0227B21: の御時より。黑谷に籠居して。如來一代の聖敎を數
J09_0227B22: 遍熟覽し剩へ諸宗の奧義を究めし。其上誹謗の過を
J09_0227B23: 負ひ。又或時は讒訴を受て。歸俗遠流の難にも値玉
J09_0227B24: へり。是の如き等の種種の艱苦を。滿八十の御年迄。
J09_0227B25: 忍び受させ玉ひて。終に此一向專念の。如是目出度
J09_0227B26: 宗義をば。世に建立在て。滅後の我等迷ひ子に。正
J09_0227B27: 赤眞珠の。本願唯稱の念佛を安やすと與へ施して。
J09_0227B28: 愛翫にはし玉へとも。只に一紙の假名書なれば。い
J09_0227B29: ろはの中より出るかと。輕易の思をなしたるは。二
J09_0227B30: 兒の眞珠に異ならんや。唯無敢も元祖大師の。無量
J09_0227B31: 無邊の御苦勞をも顧みず。往生極樂の一大事とも仰
J09_0227B32: かざるは。さしも長者は笑はれしが。我大師は悲の
J09_0227B33: 涙や袖に餘るらんされは恩謝の爲にしも。此窮極の
J09_0227B34: 金言を受持ずは有べからず。近頃東都に覺源上人と

ウィンドウを閉じる