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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0221A01: 戰塲にたれ覆ひ。異香をかぐ人多かりけり。北嶺に
J09_0221A02: 紫雲たなびくよし人申ければ。上人聞給ひて。あは
J09_0221A03: れ甘糟が。往生しつるよと仰られける。甘糟國にと
J09_0221A04: どめをく妻室の夢に。極樂の往生をとげぬるよしを
J09_0221A05: 示しければ。夢の告にをどろき。國より飛脚を立ける
J09_0221A06: に。此事を告て京より下りける使に行逢て。田舍の
J09_0221A07: 夢の告。戰塲の往生の樣。たがひにかたりけり。誠
J09_0221A08: に不思議の事にてぞありける。戰塲に命を捨て。往
J09_0221A09: 生の前途をとげ。父祖が名をもあけ。本願の深意を
J09_0221A10: もあらはせる事。しかしながらこれ。上人勸化のゆ
J09_0221A11: へなりきと。是不簡擇大悲をもて。朱に染たる甘糟
J09_0221A12: が往生にて。女人産死の不淨迄。明め知るに堪たり。
J09_0221A13: たとひ勇士にもせよ。戰塲にたたかひ死せは。心識
J09_0221A14: も散亂し。念慮も動轉して。迭ひに勝佗の思ひを生
J09_0221A15: じ。共に殘害の勢ひを作す。刀戰熾に殺戮甚しふし
J09_0221A16: ては。血烟天を汚し。紅波地を穢す。たとひよく念
J09_0221A17: 佛すとも。往生如何と心許なきに。それさへ稱名の
J09_0221B18: 聲を尋て新に往生を遂ぬれば。まして産死は。自業
J09_0221B19: 自得。他にあづかるに非れば。殘害勝佗の思ひなし。
J09_0221B20: 爭か往生の障とならんや。必ず僻説に惑はずとも。
J09_0221B21: 稱名を相續すべし『熟つら思ふに。善惡報應。毫も私
J09_0221B22: なく。因果炳然。聊も差はざれば。産死といへとも
J09_0221B23: 定て宿業の所感ならん。昔し賢提國の精舍に。一人
J09_0221B24: の長老比丘あり。長病にして痛苦限りなし。羸瘦垢
J09_0221B25: 穢不淨にして。房に在て臥す。都て瞻視する人なし。
J09_0221B26: 佛五百の比丘と與に。其所に往至して。諸の比丘を
J09_0221B27: して。共に之を視せしめ。爲に漿粥を作て服せしむ。
J09_0221B28: 諸比丘甚だ其臭穢を賤んず。佛則天帝釋に命して。
J09_0221B29: 湯水を取しめ。自ら金剛の手を以て。病比丘の身體
J09_0221B30: を洗ひ玉ふに。大地尋て震動し。〓然として大に明
J09_0221B31: か也。國王臣民。天龍鬼神。無央數の人。皆悉く驚
J09_0221B32: 肅して。佛所に往到し。稽首作禮して。佛に白して
J09_0221B33: 言く。佛は世の尊たり。三界に比ひなし。道德已に
J09_0221B34: 備り玉ふ。云何ぞ身を屈して。此病瘦垢穢の比丘を

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