浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0221A01: | 戰塲にたれ覆ひ。異香をかぐ人多かりけり。北嶺に |
J09_0221A02: | 紫雲たなびくよし人申ければ。上人聞給ひて。あは |
J09_0221A03: | れ甘糟が。往生しつるよと仰られける。甘糟國にと |
J09_0221A04: | どめをく妻室の夢に。極樂の往生をとげぬるよしを |
J09_0221A05: | 示しければ。夢の告にをどろき。國より飛脚を立ける |
J09_0221A06: | に。此事を告て京より下りける使に行逢て。田舍の |
J09_0221A07: | 夢の告。戰塲の往生の樣。たがひにかたりけり。誠 |
J09_0221A08: | に不思議の事にてぞありける。戰塲に命を捨て。往 |
J09_0221A09: | 生の前途をとげ。父祖が名をもあけ。本願の深意を |
J09_0221A10: | もあらはせる事。しかしながらこれ。上人勸化のゆ |
J09_0221A11: | へなりきと。是不簡擇大悲をもて。朱に染たる甘糟 |
J09_0221A12: | が往生にて。女人産死の不淨迄。明め知るに堪たり。 |
J09_0221A13: | たとひ勇士にもせよ。戰塲にたたかひ死せは。心識 |
J09_0221A14: | も散亂し。念慮も動轉して。迭ひに勝佗の思ひを生 |
J09_0221A15: | じ。共に殘害の勢ひを作す。刀戰熾に殺戮甚しふし |
J09_0221A16: | ては。血烟天を汚し。紅波地を穢す。たとひよく念 |
J09_0221A17: | 佛すとも。往生如何と心許なきに。それさへ稱名の |
J09_0221B18: | 聲を尋て新に往生を遂ぬれば。まして産死は。自業 |
J09_0221B19: | 自得。他にあづかるに非れば。殘害勝佗の思ひなし。 |
J09_0221B20: | 爭か往生の障とならんや。必ず僻説に惑はずとも。 |
J09_0221B21: | 稱名を相續すべし『熟つら思ふに。善惡報應。毫も私 |
J09_0221B22: | なく。因果炳然。聊も差はざれば。産死といへとも |
J09_0221B23: | 定て宿業の所感ならん。昔し賢提國の精舍に。一人 |
J09_0221B24: | の長老比丘あり。長病にして痛苦限りなし。羸瘦垢 |
J09_0221B25: | 穢不淨にして。房に在て臥す。都て瞻視する人なし。 |
J09_0221B26: | 佛五百の比丘と與に。其所に往至して。諸の比丘を |
J09_0221B27: | して。共に之を視せしめ。爲に漿粥を作て服せしむ。 |
J09_0221B28: | 諸比丘甚だ其臭穢を賤んず。佛則天帝釋に命して。 |
J09_0221B29: | 湯水を取しめ。自ら金剛の手を以て。病比丘の身體 |
J09_0221B30: | を洗ひ玉ふに。大地尋て震動し。〓然として大に明 |
J09_0221B31: | か也。國王臣民。天龍鬼神。無央數の人。皆悉く驚 |
J09_0221B32: | 肅して。佛所に往到し。稽首作禮して。佛に白して |
J09_0221B33: | 言く。佛は世の尊たり。三界に比ひなし。道德已に |
J09_0221B34: | 備り玉ふ。云何ぞ身を屈して。此病瘦垢穢の比丘を |