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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0220A01: の堂衆等。獨步のあまり。衆徒を忽緖し。日吉八王
J09_0220A02: 子の社壇を城郭として。惡行を巧みしかは。武士を
J09_0220A03: さしつかはして責られし時。忠綱勅に應じて。建
J09_0220A04: 久三年十一月十五日。堂衆の事。盛衰記第九の卷並に東鑑第十九之卷に。詳かなり彼城郭
J09_0220A05: にむかふに。先上人に叅じて申樣。我等ごときの罪人
J09_0220A06: なりとも。本願を賴みて念佛せば。往生うたがひなき
J09_0220A07: 旨。日來御をしへを承て。ふかくその旨を存ずとい
J09_0220A08: へども。それは病の床に臥て。のどかに臨終せん時の
J09_0220A09: 事なり武士の習ひ。進退心にまかせざれは。山門の
J09_0220A10: 堂衆を追罸の爲に。勅命によりて。只今八王子の城
J09_0220A11: にむかひ侍り忠綱武勇の家に生れて。弓箭の道にた
J09_0220A12: づさはる。すすみては父祖が遺塵をうしなはず。し
J09_0220A13: りぞきては。子孫の後榮をのこさんがために。敵を
J09_0220A14: 防ぎ。身を捨ば惡心熾盛にして。願念發起しがたし。
J09_0220A15: もし今生のかりなるいはれをおもひ。往生のはげむ
J09_0220A16: べき事をわすれずは。かへりて敵のためにとりこに
J09_0220A17: せられなん。ながく臆病の名をとどめて。忽に譜代
J09_0220B18: の跡をうしなひつべし。いづれを捨。いづれを取べ
J09_0220B19: しといふ事。愚意わきまへがたし。弓箭の家業をも
J09_0220B20: 捨ず。往生の素意をもとぐる道侍らば。願はくは御
J09_0220B21: 一言をうけ給はらんと申ければ。上人仰らる樣。彌
J09_0220B22: 陀の本願は。機の善惡をいはず。行の多少を論ぜず。
J09_0220B23: 身の淨不淨をえらばず。時處諸縁をきらはざれば。
J09_0220B24: 死の縁によるべからず。罪人は罪人なから名號をと
J09_0220B25: なへて往生す。これ本願の不思議なり。弓箭の家に
J09_0220B26: 生れたる人。たとひ軍陣に戰ひ。命をうしなふとも。
J09_0220B27: 念佛せば。本願に乘じ。來迎にあづからんこと。ゆめ
J09_0220B28: ゆめ疑ふべからずと。こまかに授けたまひければ。
J09_0220B29: 不審ひらけ侍りぬ。さては忠綱が往生は。今日一定
J09_0220B30: なるべしと悅び申けり。上人の御袈裟給りて。鎧の
J09_0220B31: 下にかけ。夫より頓て八王子の城へ向ひ。命を捨て
J09_0220B32: 戰ひけるに。太刀を打折てけれは。ふかき疵を蒙り
J09_0220B33: にけり。今はかくと見へけるに。太刀を捨て合掌し。
J09_0220B34: 高聲に念佛して。敵のために身をまかせけり。紫雲

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