浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J09_0220A01: | の堂衆等。獨步のあまり。衆徒を忽緖し。日吉八王 |
J09_0220A02: | 子の社壇を城郭として。惡行を巧みしかは。武士を |
J09_0220A03: | さしつかはして責られし時。忠綱勅に應じて。建 |
J09_0220A04: | 久三年十一月十五日。堂衆の事。盛衰記第九の卷並に東鑑第十九之卷に。詳かなり彼城郭 |
J09_0220A05: | にむかふに。先上人に叅じて申樣。我等ごときの罪人 |
J09_0220A06: | なりとも。本願を賴みて念佛せば。往生うたがひなき |
J09_0220A07: | 旨。日來御をしへを承て。ふかくその旨を存ずとい |
J09_0220A08: | へども。それは病の床に臥て。のどかに臨終せん時の |
J09_0220A09: | 事なり武士の習ひ。進退心にまかせざれは。山門の |
J09_0220A10: | 堂衆を追罸の爲に。勅命によりて。只今八王子の城 |
J09_0220A11: | にむかひ侍り忠綱武勇の家に生れて。弓箭の道にた |
J09_0220A12: | づさはる。すすみては父祖が遺塵をうしなはず。し |
J09_0220A13: | りぞきては。子孫の後榮をのこさんがために。敵を |
J09_0220A14: | 防ぎ。身を捨ば惡心熾盛にして。願念發起しがたし。 |
J09_0220A15: | もし今生のかりなるいはれをおもひ。往生のはげむ |
J09_0220A16: | べき事をわすれずは。かへりて敵のためにとりこに |
J09_0220A17: | せられなん。ながく臆病の名をとどめて。忽に譜代 |
J09_0220B18: | の跡をうしなひつべし。いづれを捨。いづれを取べ |
J09_0220B19: | しといふ事。愚意わきまへがたし。弓箭の家業をも |
J09_0220B20: | 捨ず。往生の素意をもとぐる道侍らば。願はくは御 |
J09_0220B21: | 一言をうけ給はらんと申ければ。上人仰らる樣。彌 |
J09_0220B22: | 陀の本願は。機の善惡をいはず。行の多少を論ぜず。 |
J09_0220B23: | 身の淨不淨をえらばず。時處諸縁をきらはざれば。 |
J09_0220B24: | 死の縁によるべからず。罪人は罪人なから名號をと |
J09_0220B25: | なへて往生す。これ本願の不思議なり。弓箭の家に |
J09_0220B26: | 生れたる人。たとひ軍陣に戰ひ。命をうしなふとも。 |
J09_0220B27: | 念佛せば。本願に乘じ。來迎にあづからんこと。ゆめ |
J09_0220B28: | ゆめ疑ふべからずと。こまかに授けたまひければ。 |
J09_0220B29: | 不審ひらけ侍りぬ。さては忠綱が往生は。今日一定 |
J09_0220B30: | なるべしと悅び申けり。上人の御袈裟給りて。鎧の |
J09_0220B31: | 下にかけ。夫より頓て八王子の城へ向ひ。命を捨て |
J09_0220B32: | 戰ひけるに。太刀を打折てけれは。ふかき疵を蒙り |
J09_0220B33: | にけり。今はかくと見へけるに。太刀を捨て合掌し。 |
J09_0220B34: | 高聲に念佛して。敵のために身をまかせけり。紫雲 |