浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0214A01: | 瓧礫變成金の御本願の故ならずや。又智者は智者に |
J09_0214A02: | て申し。愚者は愚者にて申し。慳貪者は慳貪なから |
J09_0214A03: | 申す。腹あしきものは腹あしきなから申す。一切の人 |
J09_0214A04: | みなかくのことし。されはこそあみたほとけは十方衆 |
J09_0214A05: | 生とて。ひろく願をはおこしてまします。又阿波介 |
J09_0214A06: | といふ陰陽師。上人に給仕して念佛するありけり。 |
J09_0214A07: | 或とき上人かの俗をさして。あの阿波介か申念佛と。 |
J09_0214A08: | 源空が申念佛と。いづれかまさると。聖光房にたつ |
J09_0214A09: | ね仰られけるに。心中にわきまふるむねありといへ |
J09_0214A10: | ども。御ことばをうけ給りて。たしかに所存を治定 |
J09_0214A11: | せんがために。いかでさすかに。御念佛にはひとし |
J09_0214A12: | く候べきと申されたりければ。上人ゆゆしく御氣色 |
J09_0214A13: | かはりて。されば日來淨土の法門とては何事をきか |
J09_0214A14: | れけるぞ。あの阿波介もほとけ助給へと思ひて南無 |
J09_0214A15: | あみた佛と申す。源空も佛助給へと思ひてなむあ彌 |
J09_0214A16: | 陀佛とこそ申せ。さらに差別なきなりと仰られけれ |
J09_0214A17: | は。もとより存ずる所なれとも。宗義の肝心今更な |
J09_0214B18: | るやうに。ただたふとく覺えて感涙をもよほしきと |
J09_0214B19: | ぞかたり給ひけると。彼阿波介は極めて性鈍に。其 |
J09_0214B20: | 心愚かなるもの也。當に知るべし。本願の十方衆生 |
J09_0214B21: | とは。生得の機を擧て。善惡貴賤を問ず。惟り念佛 |
J09_0214B22: | の有無を論すと云ふ事を。昔し司馬溫公幼なかりし |
J09_0214B23: | 時。諸兒と遊戯玉ひけるに。如何したりけん。一童 |
J09_0214B24: | あやまて。大なる水甕の中に陷けり。皆幼稚ものな |
J09_0214B25: | れば。いかかはせんとあはて騷ぎて。親のもとへ走 |
J09_0214B26: | るもあり。或は酌をもてこよと喚者あり。或は梯を |
J09_0214B27: | 持來り。各各隨分の智慧才覺を振舞ふ中に。溫公は |
J09_0214B28: | 少も騷がず。頓て砌りなる石をもたげて。水甕に投 |
J09_0214B29: | 付たれば。甕打破れて。水と共に童子は出て恙なか |
J09_0214B30: | りけると。是溫公を彌陀に喩へ。諸兒を諸佛に喩へ。 |
J09_0214B31: | 石を本願の名號に喩へ。梯酌等を。慈悲智惠。戒行 |
J09_0214B32: | 讀誦等の。種種の諸行諸善作福に喩へつべし。水甕 |
J09_0214B33: | を三毒五欲。流轉の迷境に喩へ。水へ落入たるは。 |
J09_0214B34: | 迷境に着するに喩ふる也。梯酌も皆濟溺の具なれと |