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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0214A01: 瓧礫變成金の御本願の故ならずや。又智者は智者に
J09_0214A02: て申し。愚者は愚者にて申し。慳貪者は慳貪なから
J09_0214A03: 申す。腹あしきものは腹あしきなから申す。一切の人
J09_0214A04: みなかくのことし。されはこそあみたほとけは十方衆
J09_0214A05: 生とて。ひろく願をはおこしてまします。又阿波介
J09_0214A06: といふ陰陽師。上人に給仕して念佛するありけり。
J09_0214A07: 或とき上人かの俗をさして。あの阿波介か申念佛と。
J09_0214A08: 源空が申念佛と。いづれかまさると。聖光房にたつ
J09_0214A09: ね仰られけるに。心中にわきまふるむねありといへ
J09_0214A10: ども。御ことばをうけ給りて。たしかに所存を治定
J09_0214A11: せんがために。いかでさすかに。御念佛にはひとし
J09_0214A12: く候べきと申されたりければ。上人ゆゆしく御氣色
J09_0214A13: かはりて。されば日來淨土の法門とては何事をきか
J09_0214A14: れけるぞ。あの阿波介もほとけ助給へと思ひて南無
J09_0214A15: あみた佛と申す。源空も佛助給へと思ひてなむあ彌
J09_0214A16: 陀佛とこそ申せ。さらに差別なきなりと仰られけれ
J09_0214A17: は。もとより存ずる所なれとも。宗義の肝心今更な
J09_0214B18: るやうに。ただたふとく覺えて感涙をもよほしきと
J09_0214B19: ぞかたり給ひけると。彼阿波介は極めて性鈍に。其
J09_0214B20: 心愚かなるもの也。當に知るべし。本願の十方衆生
J09_0214B21: とは。生得の機を擧て。善惡貴賤を問ず。惟り念佛
J09_0214B22: の有無を論すと云ふ事を。昔し司馬溫公幼なかりし
J09_0214B23: 時。諸兒と遊戯玉ひけるに。如何したりけん。一童
J09_0214B24: あやまて。大なる水甕の中に陷けり。皆幼稚ものな
J09_0214B25: れば。いかかはせんとあはて騷ぎて。親のもとへ走
J09_0214B26: るもあり。或は酌をもてこよと喚者あり。或は梯を
J09_0214B27: 持來り。各各隨分の智慧才覺を振舞ふ中に。溫公は
J09_0214B28: 少も騷がず。頓て砌りなる石をもたげて。水甕に投
J09_0214B29: 付たれば。甕打破れて。水と共に童子は出て恙なか
J09_0214B30: りけると。是溫公を彌陀に喩へ。諸兒を諸佛に喩へ。
J09_0214B31: 石を本願の名號に喩へ。梯酌等を。慈悲智惠。戒行
J09_0214B32: 讀誦等の。種種の諸行諸善作福に喩へつべし。水甕
J09_0214B33: を三毒五欲。流轉の迷境に喩へ。水へ落入たるは。
J09_0214B34: 迷境に着するに喩ふる也。梯酌も皆濟溺の具なれと

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