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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0211A01: こそ實に同體の大悲とは云ふべかめれ攝津の國の。耳四郞が事實。並に檜
J09_0211A02: 皮葺の翁金光現し。又空也上人の敎化を蒙りし。番匠か事實等思合すべし。たとへば我身の中に痛
J09_0211A03: む處あれば。是をさすり。かゆき處あれば是をかく。
J09_0211A04: かゆきも我身。痛むもわが身。かくもさするも我身
J09_0211A05: なる樣に。衆生と佛とは。一躰無二にして。同躰な
J09_0211A06: れば吾ら衆生生死の痒がり流轉の痛みを受るは。即
J09_0211A07: ち佛の痒痛なり。さればよく生死流轉の痒痛を覺知
J09_0211A08: して。名號の手をもて。かきなでさすれば。生死輪回
J09_0211A09: の疥〓も治し。惡趣流轉の苦痛も止なり。かゆみを
J09_0211A10: 治し。痛みを治したればとて。我手に禮を云ふ事も
J09_0211A11: なし。手が我に恩を求めぬは。我手を佛に凖へて。
J09_0211A12: 生佛同躰の大悲を驗め知るべし。唯よく常に。かゆ
J09_0211A13: み痛みを思ひ知りて。同躰名號の手をかりて。南無
J09_0211A14: 阿彌陀佛と是をかき。南無阿彌陀佛と是をさすれば。
J09_0211A15: 三界流轉の苦患を脱れて。九品往生の快樂を得る事。
J09_0211A16: 實に是大悲本願の。南無阿彌陀佛に造り着たる。奇
J09_0211A17: 異微玅。不可思議の力用なる者也『古き物語に云。
J09_0211B18: 昔し賀茂の神主。家を繼べき子無き事を歎きて。明
J09_0211B19: 神に祈られしに。召使の侍從と云ふ女房。程なく懷
J09_0211B20: 妊して。男子を産り。ここに本妻大に腹立し。此子
J09_0211B21: を早く捨べし。捨さるに於ては。親子共に害せんと
J09_0211B22: 嗔る故。是非なく此子を捨けり。そのかみ推古天皇
J09_0211B23: の御時。菊の金紋すえたる。御手箱を明神へ納め玉
J09_0211B24: へり。其子を練絹に裹み。彼手箱の懸子に入て。賀
J09_0211B25: 茂川の邊りに捨たりしに。そのをりしも。土御門大
J09_0211B26: 納言殿。聊か宿願の事ありて。明神に通夜して下向
J09_0211B27: あるに。河原に少者の哭聲あり。人をして召寄。自
J09_0211B28: から懷て歸り。是を養育せらるるに。利根世に勝れ
J09_0211B29: ければ。終に山門に登せて出家せしむるに。學問優
J09_0211B30: 長して。程なく貴僧と成り。尊辨僧正とそ申ける。
J09_0211B31: 御年三十三の時。嵯峨の釋迦堂に於て。説法し玉ふ。
J09_0211B32: さて母の侍從は子を捨し後歎きに堪ず。頓て遑を乞
J09_0211B33: て尼と成り。諸國を廻り。名山靈塲に詣て。捨たる
J09_0211B34: 子をも吊ひ。身の後の世を祈られけるが。三十三年

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