浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0211A01: | こそ實に同體の大悲とは云ふべかめれ攝津の國の。耳四郞が事實。並に檜 |
J09_0211A02: | 皮葺の翁金光現し。又空也上人の敎化を蒙りし。番匠か事實等思合すべし。たとへば我身の中に痛 |
J09_0211A03: | む處あれば。是をさすり。かゆき處あれば是をかく。 |
J09_0211A04: | かゆきも我身。痛むもわが身。かくもさするも我身 |
J09_0211A05: | なる樣に。衆生と佛とは。一躰無二にして。同躰な |
J09_0211A06: | れば吾ら衆生生死の痒がり流轉の痛みを受るは。即 |
J09_0211A07: | ち佛の痒痛なり。さればよく生死流轉の痒痛を覺知 |
J09_0211A08: | して。名號の手をもて。かきなでさすれば。生死輪回 |
J09_0211A09: | の疥〓も治し。惡趣流轉の苦痛も止なり。かゆみを |
J09_0211A10: | 治し。痛みを治したればとて。我手に禮を云ふ事も |
J09_0211A11: | なし。手が我に恩を求めぬは。我手を佛に凖へて。 |
J09_0211A12: | 生佛同躰の大悲を驗め知るべし。唯よく常に。かゆ |
J09_0211A13: | み痛みを思ひ知りて。同躰名號の手をかりて。南無 |
J09_0211A14: | 阿彌陀佛と是をかき。南無阿彌陀佛と是をさすれば。 |
J09_0211A15: | 三界流轉の苦患を脱れて。九品往生の快樂を得る事。 |
J09_0211A16: | 實に是大悲本願の。南無阿彌陀佛に造り着たる。奇 |
J09_0211A17: | 異微玅。不可思議の力用なる者也『古き物語に云。 |
J09_0211B18: | 昔し賀茂の神主。家を繼べき子無き事を歎きて。明 |
J09_0211B19: | 神に祈られしに。召使の侍從と云ふ女房。程なく懷 |
J09_0211B20: | 妊して。男子を産り。ここに本妻大に腹立し。此子 |
J09_0211B21: | を早く捨べし。捨さるに於ては。親子共に害せんと |
J09_0211B22: | 嗔る故。是非なく此子を捨けり。そのかみ推古天皇 |
J09_0211B23: | の御時。菊の金紋すえたる。御手箱を明神へ納め玉 |
J09_0211B24: | へり。其子を練絹に裹み。彼手箱の懸子に入て。賀 |
J09_0211B25: | 茂川の邊りに捨たりしに。そのをりしも。土御門大 |
J09_0211B26: | 納言殿。聊か宿願の事ありて。明神に通夜して下向 |
J09_0211B27: | あるに。河原に少者の哭聲あり。人をして召寄。自 |
J09_0211B28: | から懷て歸り。是を養育せらるるに。利根世に勝れ |
J09_0211B29: | ければ。終に山門に登せて出家せしむるに。學問優 |
J09_0211B30: | 長して。程なく貴僧と成り。尊辨僧正とそ申ける。 |
J09_0211B31: | 御年三十三の時。嵯峨の釋迦堂に於て。説法し玉ふ。 |
J09_0211B32: | さて母の侍從は子を捨し後歎きに堪ず。頓て遑を乞 |
J09_0211B33: | て尼と成り。諸國を廻り。名山靈塲に詣て。捨たる |
J09_0211B34: | 子をも吊ひ。身の後の世を祈られけるが。三十三年 |