浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0209A01: | ほり給へといふ房のぬしいふやうは。いみじきをこ |
J09_0209A02: | なひ人たにも。その終りをはえしらずこそ。さまさま |
J09_0209A03: | におぼしわづらひ侍るめるにも。かくの給はするこ |
J09_0209A04: | そ。げにともおぼえす侍れ。いかなる事のあれば。 |
J09_0209A05: | かくはいふそといひければ。女いふやう。われは主の |
J09_0209A06: | つかひにいちに交りて。かたかたにいとまいりしか |
J09_0209A07: | ど。此七八年日ごとに三萬返の念佛は。いかにもか |
J09_0209A08: | き侍らず。これさらに此世のためにあらず。臨終正 |
J09_0209A09: | 念。往生極樂の爲なり。しかあるにいみじき人來り |
J09_0209A10: | 給ふて。此寅のときにむかへんするぞ。必わびしと |
J09_0209A11: | な思ひそよと。こしらへ給へりつる也といひけり。 |
J09_0209A12: | さて此家主も。ゐもねずまもり居て侍けれは。ねう |
J09_0209A13: | しのかひをかぞへて。時よくなりにけりとて。おき |
J09_0209A14: | ゐてこゑをたかくして。念佛十返はかり申て。息と |
J09_0209A15: | どまりにけり。いとあはれにこそきこえ侍れ。さやう |
J09_0209A16: | のきはの者は。後の世のことをはかけふれ思ひもよ |
J09_0209A17: | らず。たださしあたりたる事をのみこそ。なげきも |
J09_0209B18: | 悅ひもする事にて侍めるに。日ことに怠りなく。つと |
J09_0209B19: | めけんこと。此世一つならぬ。えんにこそ侍けれ。げ |
J09_0209B20: | にかのむかしの無諍念王の御時の。國のたみなとに |
J09_0209B21: | て。えんをむすびて侍るやらん。よきかた人のやう |
J09_0209B22: | におぼえて。この佛の御名のみとなへられ侍るぞか |
J09_0209B23: | し。さればこそ天台大師も。みだと此世界の極惡の |
J09_0209B24: | 衆生とは。偏に因縁ありとは。説せ給ふらめと。か |
J09_0209B25: | くも下賤に殊更いそがはしく。暇なき者なれとも。 |
J09_0209B26: | 心がけ申たにすれは。さても目出度往生するなるに。 |
J09_0209B27: | 申さぬ人こそ。悲しくいと惜き限りならすや。攝機 |
J09_0209B28: | の程を論ぜば。平等覺經の正因願に。十方世界。諸 |
J09_0209B29: | 天人民。蜎飛蠕動之類。聞我名字等と説き玉へり。 |
J09_0209B30: | 是を以てあやしの烏獸に至る迄。往生するに堪へた |
J09_0209B31: | り。何に况や人として。誓に漏べき樣やはある。生死 |
J09_0209B32: | の野邊は。月一もたぬ稻葉の露もなければ。助給へ |
J09_0209B33: | 南無阿彌陀佛と。賴む心の露だにあらば宿りもらし |
J09_0209B34: | はし玉はぬ。大悲の月こそ特もしけれ。加樣の斷り |