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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0203A01: 信の機は。鞭を蒙らざるに馳るが如し。又解義の人
J09_0203A02: は自ら勝他名聞の心も有べし。仰信の人は自身を卑
J09_0203A03: 下するが故に。慚愧の心ありて。助玉への念ひも彌
J09_0203A04: 增に。他力に賴をかけ。本願に乘し易し。さて又解
J09_0203A05: 信の人は。道理を知るが故に。信力堅固なるべしと
J09_0203A06: 云ふ難に至ては。先惣して解と行とは離るべからざ
J09_0203A07: 事。車の兩輪の如く。鳥の兩翼の如くなれとも。古
J09_0203A08: へより具へざる人多し。昔し甲斐の國に。嚴融房の法印ときこえし學匠あり。いたく腹あしき人
J09_0203A09: なりけり。その妹最愛の一子にをくれけるが。親のならひとて。いたくなげきければ。よその人も訪ひ哀み侍りけるに。此上人訪はざりける
J09_0203A10: を。あなうたてや。これ程のなげきを。上人訪はれぬことよ。餘所の人たに情をかくるにといひけるを。弟子の僧もれ聞て。かの女房の恨み申
J09_0203A11: 程に。御訪ひ候べかしと諫めけれは。例の腹たちて。無下の女房かな。法師か妹などいはんものは。普通の在家の人に似るべからず。生老病
J09_0203A12: 死の國に居ながら。愛別離苦の愁ひなかるべきや。あら不覺や。いふかひなき女房かな。いでいで往てつめふせてこんとて。かさかさとして
J09_0203A13: ゆきぬ。誠にやは女房の嘆きを。法師の問ぬとてうらみ給ふとはありつる事にやといへば。あまりのなげきに。心もあられぬままにさること
J09_0203A14: も申てや候ひけんといへば。無下の人かな。さすが此法師がしたしきしるしには尋常の人にや似給ふべき。生あるものはかならず滅す。會
J09_0203A15: ものはさだめて離る。閻浮はことに老少不定の國なり。をくれさきだつ親子のわかれ。世になき事か。始て歎き驚くべきにあらず。返かえすいふ
J09_0203A16: かひなしと。呵りけれは。女房かくのごとく。此道理はうけ給りて。しりて侍れども。身をわかてる子。手付て候ひつるうへに。心ざまもかひ
J09_0203A17: かひしければ。何の道理もわすれて。ただわかれのみ悲しく覺え候と。いひあへず涙をこぼしなきけれは。あら愚癡や。道理しりながら。なを
J09_0203B18: 嘆くべきか。されはそれは。しりたるかひかある。不覺やとていよいよせめふせけり。とはかり有て。女房涙をのごひ。人の腹立候ことは。あ
J09_0203B19: しきことか。又くるしからぬ事かととへばそれは貪瞋癡の三毒とて。宗との煩惱の一ツなり。うたがふにや及ぶ。おそるしきとがなりといふ。
J09_0203B20: そのとき女房。などさらばそれ程に。道理御心得あるに。御腹はあまりにあしきぞといふにはたと。つまりて。いひやりたることばなくして
J09_0203B21: よしさらば。いかにも思ふさまに。なげき給へとて。しかりにげに。いでにけるとなんと。沙石集に見えたり彼南都北嶺
J09_0203B22: の偏執。三井山門の確執により。或は干戈を動し。
J09_0203B23: 人を劫かす事あり。是皆智者學匠なり。解と行とな
J09_0203B24: らはざるには非ず。是故に大師は。受敎と發心とは
J09_0203B25: 各別也との玉ひ。南山は解藏不苦救と宣ひ。無住
J09_0203B26: は學解を賴て。修行に疎くは。菩提を遠かるべしと
J09_0203B27: 呵し玉へり。知は行ぜんが爲ならすや。譬へは藥の
J09_0203B28: 能書を讀明めても。藥を服せされば其詮なく。能書
J09_0203B29: は讀ざれとも藥を服用すれば。立處に病を治するが
J09_0203B30: 如し。非知之艱行之惟難しと。聖敎の道理を能明
J09_0203B31: めて。疑ひなけれとも。理の如く行するものは希也
J09_0203B32: 提婆は六萬の法藏を誦持せしかとも。阿鼻の苦を招
J09_0203B33: き。槃特は僅に守口攝意身莫犯。如是行者得度世の
J09_0203B34: 一偈を持して羅漢果を得たり。匿王怪て問佛。佛偈

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