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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0199A01: 重病之淵源也亦此念佛靈藥之腑藏也非此藥者何
J09_0199A02: 治此病乃至念佛三昧者是如醍醐若非念佛三昧醍
J09_0199A03: 醐之藥者五逆深重病甚爲難治已上爰を以て。たと
J09_0199A04: ひ一代の法をよくよく學すとも。それをも物の數と
J09_0199A05: もせず。一文不知の愚鈍の身になして。尼入道の無智
J09_0199A06: の輩に同して。智者のふるまひをせすして。たた一
J09_0199A07: 向に。念佛すへしとの玉へり。其敎へ僞りならぬ現
J09_0199A08: 證を擧は妙照尼の如きは。尼妙照は。勢州白子。小民の嬛婦也。生質愚直にして。且貧窮なり
J09_0199A09: 年老て剃髮を欲ども。師僧の施物なければ。俗姓某をして剃除せしめ。亡母の法名を取て。自ら妙照と名乘る。かくて衣鉢を求め。飮食を營む
J09_0199A10: よすがもなきに。恬然として自得す。事を辨ずるに。心念西方乞を行ずろにも。口稱佛名實に是世を捨て身を厭ふ責き念佛の行者な
J09_0199A11: り。寳永六年。六月上旬の頃より。病にそみ。八月廿六日より。食物を絶すれども。唯日に四五度水を飮み。味ひ甘美なりこと。九月十一日の夜よ
J09_0199A12: り。自ら起坐し。西に向て念佛す。時時空仰き。合掌し敬信する體。いかさま勝相を拜み付たる歟。同十四日午時。姪某し前に近づひて云。君
J09_0199A13: 久しく端坐して。恐らくは疲勞あらん。暫く平臥し。安らかに念佛じ玉へと。妙照右脇に臥し。聲を勵し。念佛するありさま。最早命終と相見
J09_0199A14: へたり。姪驚き起て。外へ去らんとす。妙照其手を執て留て云く。汝今何處へ行そと。姪か云く君今命終に迫れり。某を招き共に助念せんと。
J09_0199A15: 妙照微笑して云く。止ね止ね三日已前より。西方の聖衆來て。室内に滿。環り坐して我を護ての玉はく。今日の日中。正に汝を迎接せんと。
J09_0199A16: 今當に時至れり。何そ煩しく。隣人を招んと云ひ畢て。執る處の手を放ち合掌して。南無阿彌陀佛なむあみだ佛と。唱る事八九遍。俄然
J09_0199A17: として命終す。實に寳永六年。九月十四日午の正中也。行年八十五歳と云云正く一文不通の者なれ
J09_0199B18: とも。但信稱名して現證明かに來迎を拜み。目出度
J09_0199B19: 往生せり。如是の機を。仰信分とは申す也此外但信
J09_0199B20: 稱名の行者。往生せし事。諸傳に散在す。山嶽に重
J09_0199B21: ね。牛車に積べし。更に是云ふにや及ぶ。予が勸化
J09_0199B22: を聞る。一文不通の田夫野人童男童女の類ひ唯稱念
J09_0199B23: 佛して異香を感じ紫雲を見。光明に照され化佛を拜
J09_0199B24: みて。往生せし者亦擧て計ふべからず。釋尊の金言我
J09_0199B25: 見是利も著く。大師の遺誓。無別子細も顯れたり。忝
J09_0199B26: 哉佛祖の虚語なき事今更身に染みてこそ覺え侍れ。
J09_0199B27: 夫大悲深重の誓願を尋ぬれば。賢愚尊卑の。善惡の
J09_0199B28: 難波の人も簡ひ玉はず。唯身を本願に信すれば。皆
J09_0199B29: 往生はするものを。なまじひに生賢き。心の鬼に誘
J09_0199B30: はれば。自力聖道の得悟さへ。分別を止めよ。情識を
J09_0199B31: 亡せとこそ敎るに何に况や他力格外の宗風。扇て情
J09_0199B32: 識を事とせんや。量山開祖云く。機知を泯絶し。悟解を剝盡す。必す搆へて自他
J09_0199B33: 二門に嫌はるる。智惠だてをして。慮知分別に亘ざ
J09_0199B34: れ。されば大師の宣ずや。十惡の法然房。東西をも

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