浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0191A01: | 置たりけるが。明る十一日朝五過。又頻りに苦しき |
J09_0191A02: | とて責む。故に父が妹の實門尼。傍らに付添。勸て |
J09_0191A03: | 念佛せしむ。暫く有て苦痛止み。自から勵しく稱名 |
J09_0191A04: | せり。實門もけしからず思ひ。いよいよ勵んて助音 |
J09_0191A05: | しけるが。頓て合掌を解き左の手を揚げ。西方に指 |
J09_0191A06: | し。あれあれと三返まで云ひ了て。又念佛する事四 |
J09_0191A07: | 五返。聲と共に命終せり。實に寬延三戊午年五月十一 |
J09_0191A08: | 日也。これ予が親しく見聞する處にして。毫も違ふ |
J09_0191A09: | 事なし。皆是大悲窮極の本願。唯稱玅力の至す處に |
J09_0191A10: | して凡夫の所知に非す。此子わつか六歳の稚何ぞ |
J09_0191A11: | 安心の沙汰に及ばんや。何ぞ信心の淺深を論ぜんや。 |
J09_0191A12: | 只父母の呵責を得て。日日十遍二十遍づづ。南無阿 |
J09_0191A13: | 彌陀佛と申たる迄の。ただ申也。いか樣にも日課を受べき事なり。彼が母名代に受 |
J09_0191A14: | 持せし故に此子稱名したるなり。爰に知る。今宗旨門とする處は。全く |
J09_0191A15: | 但信の稱名なる事を。但信とはただ南無阿彌陀佛と |
J09_0191A16: | 申せば。極樂にまいるぞと。信じ取たるを云ふ也。 |
J09_0191A17: | 故に本文に。たた往生極樂のためには。南無阿彌陀 |
J09_0191B18: | 佛と申外には。別の子細候はずとの玉へる是なり已 |
J09_0191B19: | 上宗旨門畢ぬ。『されば唯は字書に獨也と。しかれは |
J09_0191B20: | 本願の念佛に獨立せさよとの玉ひ。たた一向に念佛 |
J09_0191B21: | すへしとの玉へるは。起行のただなるべし。たた往生 |
J09_0191B22: | 極樂のためにはのただは。安心なるべし。たた賴め |
J09_0191B23: | よろつのつみは重くともの聖告。並に古歌のただ申 |
J09_0191B24: | せのただも安心なるべし。歌にたた申せ申せば聲を |
J09_0191B25: | たづね來て人えらひなく必得往生と。實に宗門の安 |
J09_0191B26: | 心の峠。念佛は唯口に唱ふる計りにて。別に子細な |
J09_0191B27: | し。念佛申す程の人は。往生の望あるへし。望む心 |
J09_0191B28: | に僞りなきは實なり。實なれば至誠心也。望む心に |
J09_0191B29: | 機あつかひもなく。疑ひもなく申すは。深心なり。 |
J09_0191B30: | 此念佛にて助け玉へと思ふは。回向心なり。此三心 |
J09_0191B31: | を地盤として。申念佛なるか故に。口計りにてたた |
J09_0191B32: | 申の念佛か。肝要の念佛也。この故に大師常の御詞 |
J09_0191B33: | に。念佛を申には全く別の樣なし。たた申せば極樂 |
J09_0191B34: | へ生るるとしりてこころをいたして申せはまいるな |