浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0173A01: | 大婦は今の我身これ也。彼妾が子の頭に針を打し罪 |
J09_0173A02: | 猶殘て。羅漢果を得たれとも。頂き常に針を以て刺 |
J09_0173A03: | か如く。苦痛足まで通て猶止ずとそ語られける。賢愚因縁 |
J09_0173A04: | 經の説を和解せり是はこれ唯假初に當座の非を餝らんとして。 |
J09_0173A05: | 眞實の願心にはあらねとも。口計りの誓言を立しか。 |
J09_0173A06: | 終に立し詞の如く少も違はす。其報を得たり。惡は造作のみ |
J09_0173A07: | にして業道を成す。善事は爾らず願心堅固ならざれば。業を成ぜす。是善惡因果格別。上昇難。下沈易の謂ひなり。信ずべし。又 |
J09_0173A08: | 過ぬる正保三年。江州杉山の中。信樂木村と。山城 |
J09_0173A09: | の湯舟村と。山境の諍論あり。其時五味金右衛門殿 |
J09_0173A10: | より檢使を立て。境ひ目を改めらるるに。杉山村の |
J09_0173A11: | 領分と見分たり。然るに前前より。湯舟村領地の證 |
J09_0173A12: | 據多端なりける。此時杉山村の者共申やうは。兎角 |
J09_0173A13: | 起請文にて申譯いたさんと村中殘らず起請を書て山 |
J09_0173A14: | を取り侍りける。其起請の中に白癩黑癩とならんと |
J09_0173A15: | 誓言を書入けるが。夫より三年を經る慶安二年の春 |
J09_0173A16: | の頃より。其村五六拾軒。のこらす癩に成にけり。 |
J09_0173A17: | 其中に老宿三人ありて連判に加はらざりけるが是の |
J09_0173B18: | み恙なかりけりと。寔に起請の天罸こそ最驗く顯 |
J09_0173B19: | はれたり。已上洞空和上の門人。蓮盛法師の記錄也かかる報ひの怖ろしき |
J09_0173B20: | 例し。皆是起請誓言の違はざる。約束に歸するに非 |
J09_0173B21: | ずや。今圓光大師。忝も御臨末に及で。末代の我等多 |
J09_0173B22: | 岐に迷ひ念佛の安心。往生の徑路に惑はん事を悲み |
J09_0173B23: | 玉ひて。若此一紙の外に奧深き事を存せは二尊のあ |
J09_0173B24: | はれみにはつれ本願にももれ候へしとの起請誓言こ |
J09_0173B25: | そ。一切衆生の賜ぞかし。誰の罪人か爰に感心せざら |
J09_0173B26: | んや。倩倩是を思ひ解けは我ら僅に願生の心を發し。 |
J09_0173B27: | 假初にも日課念佛を誓約受持せん。其德何ぞ有上ん |
J09_0173B28: | や。假令ひ今日計りの誓言なりとも。誓ひを立て。 |
J09_0173B29: | 日課念佛を受持すべし。此念佛の德たる。空く三途 |
J09_0173B30: | に還るべけんや。論には觀佛本願力。遇無空過者と |
J09_0173B31: | 判し。又は正覺阿彌陀法王善住持と。不虚作住持功 |
J09_0173B32: | 德在す。彌陀願王の本誓。正定業の念佛なれば。誓 |
J09_0173B33: | ふ者は直ちに大悲の心に憶念して忘るる事なく。唱 |
J09_0173B34: | ふるものは速に光明の中に攝取して捨玉はず。終に |