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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0173A01: 大婦は今の我身これ也。彼妾が子の頭に針を打し罪
J09_0173A02: 猶殘て。羅漢果を得たれとも。頂き常に針を以て刺
J09_0173A03: か如く。苦痛足まで通て猶止ずとそ語られける。賢愚因縁
J09_0173A04: 經の説を和解せり是はこれ唯假初に當座の非を餝らんとして。
J09_0173A05: 眞實の願心にはあらねとも。口計りの誓言を立しか。
J09_0173A06: 終に立し詞の如く少も違はす。其報を得たり。惡は造作のみ
J09_0173A07: にして業道を成す。善事は爾らず願心堅固ならざれば。業を成ぜす。是善惡因果格別。上昇難。下沈易の謂ひなり。信ずべし。又
J09_0173A08: 過ぬる正保三年。江州杉山の中。信樂木村と。山城
J09_0173A09: の湯舟村と。山境の諍論あり。其時五味金右衛門殿
J09_0173A10: より檢使を立て。境ひ目を改めらるるに。杉山村の
J09_0173A11: 領分と見分たり。然るに前前より。湯舟村領地の證
J09_0173A12: 據多端なりける。此時杉山村の者共申やうは。兎角
J09_0173A13: 起請文にて申譯いたさんと村中殘らず起請を書て山
J09_0173A14: を取り侍りける。其起請の中に白癩黑癩とならんと
J09_0173A15: 誓言を書入けるが。夫より三年を經る慶安二年の春
J09_0173A16: の頃より。其村五六拾軒。のこらす癩に成にけり。
J09_0173A17: 其中に老宿三人ありて連判に加はらざりけるが是の
J09_0173B18: み恙なかりけりと。寔に起請の天罸こそ最驗く顯
J09_0173B19: はれたり。已上洞空和上の門人。蓮盛法師の記錄也かかる報ひの怖ろしき
J09_0173B20: 例し。皆是起請誓言の違はざる。約束に歸するに非
J09_0173B21: ずや。今圓光大師。忝も御臨末に及で。末代の我等多
J09_0173B22: 岐に迷ひ念佛の安心。往生の徑路に惑はん事を悲み
J09_0173B23: 玉ひて。若此一紙の外に奧深き事を存せは二尊のあ
J09_0173B24: はれみにはつれ本願にももれ候へしとの起請誓言こ
J09_0173B25: そ。一切衆生の賜ぞかし。誰の罪人か爰に感心せざら
J09_0173B26: んや。倩倩是を思ひ解けは我ら僅に願生の心を發し。
J09_0173B27: 假初にも日課念佛を誓約受持せん。其德何ぞ有上ん
J09_0173B28: や。假令ひ今日計りの誓言なりとも。誓ひを立て。
J09_0173B29: 日課念佛を受持すべし。此念佛の德たる。空く三途
J09_0173B30: に還るべけんや。論には觀佛本願力。遇無空過者と
J09_0173B31: 判し。又は正覺阿彌陀法王善住持と。不虚作住持功
J09_0173B32: 德在す。彌陀願王の本誓。正定業の念佛なれば。誓
J09_0173B33: ふ者は直ちに大悲の心に憶念して忘るる事なく。唱
J09_0173B34: ふるものは速に光明の中に攝取して捨玉はず。終に

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