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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0171A01: 後尚以猥異義依之雖病床臥給此一紙を申請處也
J09_0171A02: 爲不殘疑滯上人御自筆御判形令注置給處如
J09_0171A03: 件。正月廿八日源智とはしるし玉へり。依て以て自
J09_0171A04: ら。一枚起請文とは號し奉るもの也。且つ起請誓言
J09_0171A05: の上に。手印華押まてを添玉へり。爲證以兩手印
J09_0171A06: 云へる是なり。本朝の習ひにして。往古より大切の
J09_0171A07: 證文には。兩手を以て印とせり。鎭西の授手印。豈異事を證せんや。知るへし。
J09_0171A08: もと神代に初りて押手など云ふ。世間に手形と云へ
J09_0171A09: るも此古事なるへし。今大師一切衆生。出離生死の一
J09_0171A10: 大事を。決定證明し玉ふ御遺言なる故に。誓言起請の
J09_0171A11: 上に。又叮嚀に兩手印を用ひ。書判迄も添玉へり。是
J09_0171A12: 誓言起請は。能く事を成するの警策なり。例せば佛
J09_0171A13: 在世に微玅尼と云ふあり阿羅漢果を得て後ち。諸の
J09_0171A14: 尼衆に向て。過去生の善惡因果の事を説玉ふ中に云
J09_0171A15: く。昔し一人の長者あり。本妻あれとも子なき故に。
J09_0171A16: 小婦を寵愛し。程なく男子を産せり。其形ち美しき
J09_0171A17: 事珠の如し。長者これを悅び。我紫摩金也と重んず。
J09_0171B18: 大婦嫉妬の心甚だ深くして是を殺さんとして。密に
J09_0171B19: 鐵針を儲て此子の頂に打入る。是に依て煩て遂に死
J09_0171B20: す。小婦謂らく。極めて大婦の害せるなるべしとて。
J09_0171B21: おめき叫んで深く悲嘆せり。大婦是を聞て我所爲に
J09_0171B22: 非る由を諍ひ。則ち罪を免ん爲に誓言を立つ。此誓言は。虚
J09_0171B23: 妄假令に立たり。因果長者經の中にもあり。我若汝が子を害したらんに於ては。
J09_0171B24: 生生世世女身を受。かたらひそふ所の夫必大虵にさ
J09_0171B25: し殺され生る子は水に漂よひ。或は犲に食はれ。或
J09_0171B26: は自から我子の肉を食はん。又父母の家は失火し。
J09_0171B27: 燒亡し。父母も同く燒死すべし。又我身は生ながら
J09_0171B28: 土中に埋められん抔。種種怖ろしき誓言しけり。か
J09_0171B29: かる上はとて長者も小婦も遂に心解けぬ。爰に大婦
J09_0171B30: は壽盡て死す。小婦か子を殺害せし罪に依て。先地
J09_0171B31: 獄に墮して烔燃猛火に燒かれ。或は紅蓮の寒氷に閉
J09_0171B32: ぢられ。其外惡道を廻る事。我舍宅の如し。幾千萬劫
J09_0171B33: 經終て漸く地獄の業盡て後。人中の女身を受て。遂
J09_0171B34: に嫁して一男子を産し。又一子を孕めり。月滿るに

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