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J1360 一枚起請文梗概聞書 関通 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0152A01: 艱辛勞苦を經・剩へ歸俗流刑の難にあひ玉へとも・
J09_0152A02: 少しも痛心し玉ふ氣色もなく・終にかく一向專修を
J09_0152A03: 弘通し玉ふ事・哀に忝き事にあらずや・是大悲熏習
J09_0152A04: の致す處にして・末世の我らに・偏敎正念住西方の
J09_0152A05: 决信を取しめ・順次に生死を過度し・報土往生を遂
J09_0152A06: しめんとの御爲業なり・實につれなき我等なれとも・
J09_0152A07: かく眞成に忝き事を思へは悲喜こもこも堪がたかめ
J09_0152A08: り・「若それ父母の遺訓を用る時は速に大功を成し・
J09_0152A09: 終に榮名を立る例し多き中に・昔し齊の閔王の后を
J09_0152A10: 宿瘤と名く・頸に大なる瘤あるが故に名を得たり・
J09_0152A11: 此后は本百姓の生れなりしが・或時閔王遊で東郭に
J09_0152A12: 至り玉ふ・百姓ことことく是を拜す・然るに此宿瘤
J09_0152A13: のみ・桑を採る事故の如し・閔王怪て問て云く・我
J09_0152A14: 出て遊ぶ・百姓少長となく・皆來て我儀衛を拜する
J09_0152A15: に・汝ら一度も首を擧る事なきは何そやと・宿瘤が
J09_0152A16: 云く・妾は父母の敎を受て桑を採る・未た大王の遊
J09_0152A17: び玉ふを見よと云ふ敎を受ず・故に見る事なしと・
J09_0152B18: 王驚て曰く・卑女なれとも奇異の心あり・惜い哉瘤
J09_0152B19: ありて容見にくしと・宿瘤が云く・我は父母の敎に
J09_0152B20: 違はじと心を守りて・形の善惡に心をかけざれば・
J09_0152B21: 瘤あれども愁ひとするに足らずと・閔王いよいよ驚
J09_0152B22: き命して曰く・是賢女なり・同車して我后とせんと
J09_0152B23: 宿瘤が云く・父母の敎に非ずして君に隨はば是奔女
J09_0152B24: なり・君いづくんぞ奔女を后とし玉はんやと・奔女とは婚禮なく
J09_0152B25: して・男女私に婬して・夫婦となるを云ふ・王慙て還御し玉ひ・重て黄金百鎰
J09_0152B26: を送り・宿瘤を聘せらる父母大に驚き・いざ沐浴し
J09_0152B27: て身を淨め衣服を飾らんとす・宿瘤が云く初め此躰
J09_0152B28: にて君に見へたり・今衣服を替ば君見わすれ玉はん
J09_0152B29: とて・終に桑をとりたる時の形を以て・宮中に入れ
J09_0152B30: り・閔王これを后として・いよいよ賢女の德を顯し・
J09_0152B31: 聖化隣國に及び・上下豊かに治りたりと・是あに父
J09_0152B32: 母の敎を守る孝德に非ずや・今も爾り・元祖大師を
J09_0152B33: 宿瘤が父母に喩・宿瘤を今日の我等に喩ふ・謂く高祖
J09_0152B34: の御遺訓を信して・一向口稱するは・宿瘤が父母の

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