浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0152A01: | 艱辛勞苦を經・剩へ歸俗流刑の難にあひ玉へとも・ |
J09_0152A02: | 少しも痛心し玉ふ氣色もなく・終にかく一向專修を |
J09_0152A03: | 弘通し玉ふ事・哀に忝き事にあらずや・是大悲熏習 |
J09_0152A04: | の致す處にして・末世の我らに・偏敎正念住西方の |
J09_0152A05: | 决信を取しめ・順次に生死を過度し・報土往生を遂 |
J09_0152A06: | しめんとの御爲業なり・實につれなき我等なれとも・ |
J09_0152A07: | かく眞成に忝き事を思へは悲喜こもこも堪がたかめ |
J09_0152A08: | り・「若それ父母の遺訓を用る時は速に大功を成し・ |
J09_0152A09: | 終に榮名を立る例し多き中に・昔し齊の閔王の后を |
J09_0152A10: | 宿瘤と名く・頸に大なる瘤あるが故に名を得たり・ |
J09_0152A11: | 此后は本百姓の生れなりしが・或時閔王遊で東郭に |
J09_0152A12: | 至り玉ふ・百姓ことことく是を拜す・然るに此宿瘤 |
J09_0152A13: | のみ・桑を採る事故の如し・閔王怪て問て云く・我 |
J09_0152A14: | 出て遊ぶ・百姓少長となく・皆來て我儀衛を拜する |
J09_0152A15: | に・汝ら一度も首を擧る事なきは何そやと・宿瘤が |
J09_0152A16: | 云く・妾は父母の敎を受て桑を採る・未た大王の遊 |
J09_0152A17: | び玉ふを見よと云ふ敎を受ず・故に見る事なしと・ |
J09_0152B18: | 王驚て曰く・卑女なれとも奇異の心あり・惜い哉瘤 |
J09_0152B19: | ありて容見にくしと・宿瘤が云く・我は父母の敎に |
J09_0152B20: | 違はじと心を守りて・形の善惡に心をかけざれば・ |
J09_0152B21: | 瘤あれども愁ひとするに足らずと・閔王いよいよ驚 |
J09_0152B22: | き命して曰く・是賢女なり・同車して我后とせんと |
J09_0152B23: | 宿瘤が云く・父母の敎に非ずして君に隨はば是奔女 |
J09_0152B24: | なり・君いづくんぞ奔女を后とし玉はんやと・奔女とは婚禮なく |
J09_0152B25: | して・男女私に婬して・夫婦となるを云ふ・王慙て還御し玉ひ・重て黄金百鎰 |
J09_0152B26: | を送り・宿瘤を聘せらる父母大に驚き・いざ沐浴し |
J09_0152B27: | て身を淨め衣服を飾らんとす・宿瘤が云く初め此躰 |
J09_0152B28: | にて君に見へたり・今衣服を替ば君見わすれ玉はん |
J09_0152B29: | とて・終に桑をとりたる時の形を以て・宮中に入れ |
J09_0152B30: | り・閔王これを后として・いよいよ賢女の德を顯し・ |
J09_0152B31: | 聖化隣國に及び・上下豊かに治りたりと・是あに父 |
J09_0152B32: | 母の敎を守る孝德に非ずや・今も爾り・元祖大師を |
J09_0152B33: | 宿瘤が父母に喩・宿瘤を今日の我等に喩ふ・謂く高祖 |
J09_0152B34: | の御遺訓を信して・一向口稱するは・宿瘤が父母の |