浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0076A01: | あれ・未だ不退を得ざれば穢土に居し難し・生を穢國 |
J09_0076A02: | に受くれば・隔生即忘の憂あり・婆儞尼再生の日・我 |
J09_0076A03: | 前生に造りし聲論を忘れしを・得通の人見て笑ひし |
J09_0076A04: | 事あり・鎌倉の右大臣の前生は・唐育王山の住持にて |
J09_0076A05: | 侍りしと云事東鑑に見えたり・鎌倉圓覺寺ノ縁起ニ有異説可見時代を |
J09_0076A06: | 考ふれば無凖癡絶などの・幼年の比に當る・大悟の |
J09_0076A07: | 人も多かりし時也其代の育王山の住持ならば・設名 |
J09_0076A08: | 而不高僧也とも・常の人にてはあらじ・然に實朝公 |
J09_0076A09: | の行狀を聞くに重盛泰時の類の・良將にもあらず・ |
J09_0076A10: | 生を隔つれば忘ると云事・顯然たり・陳和卿は・實 |
J09_0076A11: | 朝公前生僧たりし時の・弟子にて有しと也・彼は前生 |
J09_0076A12: | の事を覺えしに・實朝公は覺え給はず・弟子には劣 |
J09_0076A13: | 給へり・近き世の加藤淸正も前生僧にてありしと也・ |
J09_0076A14: | 慶長五年の軍の後・淸正肥後の州の大守と成る・存 |
J09_0076A15: | 生の日國中に我靈屋を建置くべしといひて・熊本近 |
J09_0076A16: | き山に登り木を截らせ・地を平均せしに・松の木の |
J09_0076A17: | 下より石の櫃を掘り出す・櫃の葢に墓誌あり・法華 |
J09_0076B18: | の持者・淸正法師が骸骨を納む と書せり・年號月日 |
J09_0076B19: | をも記せり・死骸を朱にて詰めたり・世人歸敬せし |
J09_0076B20: | 僧と見ゆ・肥後守我れ彼の僧が再生なる事を知り・ |
J09_0076B21: | 即櫃を掘出したる地に・靈屋を建て須彌壇を櫃の内 |
J09_0076B22: | にありし朱にて塗れり・同じ山に・一寺を建立して |
J09_0076B23: | 淸正寺と號す今改妙安肥後の守・勇を異國に振ひ・名を |
J09_0076B24: | 此國に殘すといへども・智仁勇を具したる人にもあ |
J09_0076B25: | らす・况や出離生死の人なるべしとは思ひ難し・前 |
J09_0076B26: | 生僧なりし時の・發願廻向のあしかりしにやありけ |
J09_0076B27: | ん・法華讀誦の人・願あらば佛土にも生じ・説の如く |
J09_0076B28: | 修行せば頓に佛果をも成ずべきにあたら法華の功德 |
J09_0076B29: | を夢中の善果と成ししは殘り多き事也・貝を傾けて |
J09_0076B30: | 海を酌み羽を潤して林に灑く誓願に由らすといふ事 |
J09_0076B31: | なし・或は小善の無量の果を招く事あり・或は多善の |
J09_0076B32: | 狹小の果を感ずる事あり・行を牽き果に趣くには願 |
J09_0076B33: | を最要とす・故に惠心の云・我從今日・乃至一善・ |
J09_0076B34: | 不爲己身有漏果報・盡爲極樂・盡爲菩提・ |