ウィンドウを閉じる

J1340 一枚起請但信鈔 隆長 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0076A01: あれ・未だ不退を得ざれば穢土に居し難し・生を穢國
J09_0076A02: に受くれば・隔生即忘の憂あり・婆儞尼再生の日・我
J09_0076A03: 前生に造りし聲論を忘れしを・得通の人見て笑ひし
J09_0076A04: 事あり・鎌倉の右大臣の前生は・唐育王山の住持にて
J09_0076A05: 侍りしと云事東鑑に見えたり・鎌倉圓覺寺ノ縁起ニ有異説可見時代を
J09_0076A06: 考ふれば無凖癡絶などの・幼年の比に當る・大悟の
J09_0076A07: 人も多かりし時也其代の育王山の住持ならば・設名
J09_0076A08: 而不高僧也とも・常の人にてはあらじ・然に實朝公
J09_0076A09: の行狀を聞くに重盛泰時の類の・良將にもあらず・
J09_0076A10: 生を隔つれば忘ると云事・顯然たり・陳和卿は・實
J09_0076A11: 朝公前生僧たりし時の・弟子にて有しと也・彼は前生
J09_0076A12: の事を覺えしに・實朝公は覺え給はず・弟子には劣
J09_0076A13: 給へり・近き世の加藤淸正も前生僧にてありしと也・
J09_0076A14: 慶長五年の軍の後・淸正肥後の州の大守と成る・存
J09_0076A15: 生の日國中に我靈屋を建置くべしといひて・熊本近
J09_0076A16: き山に登り木を截らせ・地を平均せしに・松の木の
J09_0076A17: 下より石の櫃を掘り出す・櫃の葢に墓誌あり・法華
J09_0076B18: の持者・淸正法師が骸骨を納む と書せり・年號月日
J09_0076B19: をも記せり・死骸を朱にて詰めたり・世人歸敬せし
J09_0076B20: 僧と見ゆ・肥後守我れ彼の僧が再生なる事を知り・
J09_0076B21: 即櫃を掘出したる地に・靈屋を建て須彌壇を櫃の内
J09_0076B22: にありし朱にて塗れり・同じ山に・一寺を建立して
J09_0076B23: 淸正寺と號す今改妙安肥後の守・勇を異國に振ひ・名を
J09_0076B24: 此國に殘すといへども・智仁勇を具したる人にもあ
J09_0076B25: らす・况や出離生死の人なるべしとは思ひ難し・前
J09_0076B26: 生僧なりし時の・發願廻向のあしかりしにやありけ
J09_0076B27: ん・法華讀誦の人・願あらば佛土にも生じ・説の如く
J09_0076B28: 修行せば頓に佛果をも成ずべきにあたら法華の功德
J09_0076B29: を夢中の善果と成ししは殘り多き事也・貝を傾けて
J09_0076B30: 海を酌み羽を潤して林に灑く誓願に由らすといふ事
J09_0076B31: なし・或は小善の無量の果を招く事あり・或は多善の
J09_0076B32: 狹小の果を感ずる事あり・行を牽き果に趣くには願
J09_0076B33: を最要とす・故に惠心の云・我從今日・乃至一善・
J09_0076B34: 不爲己身有漏果報・盡爲極樂・盡爲菩提・

ウィンドウを閉じる