浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0052A01: | の本文なり。此本文に起文請と。奧書とを加へて。 |
J09_0052A02: | 末期の御遺誡とはし玉ひけるなり。さるを此縁起を |
J09_0052A03: | 知らざる人は。一枚起請は御臨終に始めて書置かせ |
J09_0052A04: | 玉へる。御遺誡とのみ思へり。是故に鎭西相承の規 |
J09_0052A05: | 模を忘るるのみにあらず。又大師の密意もあらはれ |
J09_0052A06: | ざるなり。しかれば吉水鎭西の末學は。特に知るべ |
J09_0052A07: | き縁起なり |
J09_0052A08: | 鎭西聖光上人。諱は辨阿。筑前香月の庄の人なり。 |
J09_0052A09: | 生年十四歳より天台宗を學す。二十二歳。壽永二年 |
J09_0052A10: | の春。延曆寺に登りて。東塔南谷觀叡法橋の室に入り |
J09_0052A11: | 後には寳地房法印證眞に事へて。一宗の秘頥を受け。 |
J09_0052A12: | 四明の奧義を究む。二十九歳。建長元年に故郷に歸 |
J09_0052A13: | り。解行譽ありしかば。油山の學頭に補せらる。三 |
J09_0052A14: | 十二の歳世の無常をさとりて。無上道心を發し。今 |
J09_0052A15: | 生の名利を捨て偏に往生極樂を願ひて。念佛の行者 |
J09_0052A16: | とぞなり玉ひける。建久八年に上洛して。吉水の勸 |
J09_0052A17: | 化の盛なるを聞きて心中に思惟すらく。諸宗皆往生 |
J09_0052B18: | を願ひ念佛を行ず。其中に念佛の義を釋すること。台 |
J09_0052B19: | 宗に過きたるはなし。今法然上人念佛を弘通し玉ふ |
J09_0052B20: | といへども其義道何ぞ我所解に過きんやと。しかは |
J09_0052B21: | あれど。昔し寳地房法印。常に上人の智德を讃歎せ |
J09_0052B22: | られし事を思ひ出て。結縁せばやと思ひて。吉水の |
J09_0052B23: | 禪室に參ず。時に大師六十五。辨阿三十六なり。遁世 |
J09_0052B24: | 念佛の行者なるよし申入れられければ。大師念佛の |
J09_0052B25: | 義は廣く事理定散に通じて。普く八宗九宗に涉る。未 |
J09_0052B26: | 審汝が行ずる所はいづれの念佛ぞやと問はれし時。 |
J09_0052B27: | 其勢ひ大山の覆ふが如く。大海に望むが如くにして。 |
J09_0052B28: | 茫然として答ふることあたはず。時に大師の曰。汝 |
J09_0052B29: | は天台の學者なれば今まさに三重の念佛を分別し聞 |
J09_0052B30: | かしめん。一には摩訶止觀に明す念佛。二には往生 |
J09_0052B31: | 要集に勸むる念佛。三には善導和尚の立玉へる念佛 |
J09_0052B32: | なりとて。此三重の念佛をしきりに立てかへてくは |
J09_0052B33: | しく其義を演玉ふに。文義廣博にして智解深遠なり。 |
J09_0052B34: | 崑崙の頂を仰くが如く蓬瀛の底を臨むに似たり。未 |