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J1330 吉水遺誓諺論附録正流弁 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0052A01: の本文なり。此本文に起文請と。奧書とを加へて。
J09_0052A02: 末期の御遺誡とはし玉ひけるなり。さるを此縁起を
J09_0052A03: 知らざる人は。一枚起請は御臨終に始めて書置かせ
J09_0052A04: 玉へる。御遺誡とのみ思へり。是故に鎭西相承の規
J09_0052A05: 模を忘るるのみにあらず。又大師の密意もあらはれ
J09_0052A06: ざるなり。しかれば吉水鎭西の末學は。特に知るべ
J09_0052A07: き縁起なり
J09_0052A08: 鎭西聖光上人。諱は辨阿。筑前香月の庄の人なり。
J09_0052A09: 生年十四歳より天台宗を學す。二十二歳。壽永二年
J09_0052A10: の春。延曆寺に登りて。東塔南谷觀叡法橋の室に入り
J09_0052A11: 後には寳地房法印證眞に事へて。一宗の秘頥を受け。
J09_0052A12: 四明の奧義を究む。二十九歳。建長元年に故郷に歸
J09_0052A13: り。解行譽ありしかば。油山の學頭に補せらる。三
J09_0052A14: 十二の歳世の無常をさとりて。無上道心を發し。今
J09_0052A15: 生の名利を捨て偏に往生極樂を願ひて。念佛の行者
J09_0052A16: とぞなり玉ひける。建久八年に上洛して。吉水の勸
J09_0052A17: 化の盛なるを聞きて心中に思惟すらく。諸宗皆往生
J09_0052B18: を願ひ念佛を行ず。其中に念佛の義を釋すること。台
J09_0052B19: 宗に過きたるはなし。今法然上人念佛を弘通し玉ふ
J09_0052B20: といへども其義道何ぞ我所解に過きんやと。しかは
J09_0052B21: あれど。昔し寳地房法印。常に上人の智德を讃歎せ
J09_0052B22: られし事を思ひ出て。結縁せばやと思ひて。吉水の
J09_0052B23: 禪室に參ず。時に大師六十五。辨阿三十六なり。遁世
J09_0052B24: 念佛の行者なるよし申入れられければ。大師念佛の
J09_0052B25: 義は廣く事理定散に通じて。普く八宗九宗に涉る。未
J09_0052B26: 審汝が行ずる所はいづれの念佛ぞやと問はれし時。
J09_0052B27: 其勢ひ大山の覆ふが如く。大海に望むが如くにして。
J09_0052B28: 茫然として答ふることあたはず。時に大師の曰。汝
J09_0052B29: は天台の學者なれば今まさに三重の念佛を分別し聞
J09_0052B30: かしめん。一には摩訶止觀に明す念佛。二には往生
J09_0052B31: 要集に勸むる念佛。三には善導和尚の立玉へる念佛
J09_0052B32: なりとて。此三重の念佛をしきりに立てかへてくは
J09_0052B33: しく其義を演玉ふに。文義廣博にして智解深遠なり。
J09_0052B34: 崑崙の頂を仰くが如く蓬瀛の底を臨むに似たり。未

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