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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0045A01: 鎭西に授け玉へる法語を。再び取用ひ玉ひて。此の一
J09_0045A02: 段を御誓言に改めて。末期の極訓とはなし玉へり。
J09_0045A03: その御意は。鎭西聖光の相承は。眞實吉水の瀉瓶に
J09_0045A04: して。本願念佛の正義なりと云事を。滅後末代の衆
J09_0045A05: 生にながく信を取らしめんが爲なり。さらずはいか
J09_0045A06: に。黑谷語燈錄七卷に及べる。數多の法語の中に。
J09_0045A07: わきて鎭西相承の法語を揀取て。末期の御遺誓とは
J09_0045A08: し玉はんや。されば鎭西相承の正宗。漸漸世に弘ま
J09_0045A09: りて。五百年來天下に彌綸するを思ふに。大師の御
J09_0045A10: 遺鑑まことに不可思議にして。御遺誓の烈功も。ま
J09_0045A11: た不可思議なる者なり。
J09_0045A12: 御遺誡の來由の肝要は。此起請の一段に極まる。安
J09_0045A13: 心もつねの安心。起行もつねの起行。法語もつねの法
J09_0045A14: 語にして。みな珍らしき事にはあらず。ただ此起請
J09_0045A15: 文と。滅後の邪義を防がんが爲にと。奧書を加へ玉
J09_0045A16: へるのみが。正しく遺誡の御志なり。その故は。前の
J09_0045A17: 段に。南無阿彌陀佛と申て。疑なく往生するぞと思取
J09_0045B18: て申内に。三心も四修もみな籠れりとの玉ふまでが。
J09_0045B19: 淨土宗の安心起行の至極なり。大師三十餘年この御
J09_0045B20: 勸化をなし玉ひて。その利益廣大なりしに。晩年の
J09_0045B21: 比他宗に暗推の義をこり。門弟に背宗の義をこりて。
J09_0045B22: 大師の御勸化をば。劣機の爲の假の方便なりとすて
J09_0045B23: て。有智の爲には別に奧深き安心起行あり。これ大
J09_0045B24: 師御眞實の秘傳なり。此義を學問せよ。領解せよ
J09_0045B25: と。訇りて。無智の男女に大師の御心を疑はしめた
J09_0045B26: り。御在世の時。はやすでに。かくのごとく。水老
J09_0045B27: 鶴の弊。世にをこりければ。もしこれらの邪義が。滅
J09_0045B28: 後に流れゆき。又數多の滅後の門弟の中にも。また
J09_0045B29: いかなる背徒か。出で來。いかなる新奇の安心をか構
J09_0045B30: へて。これこそ吉水の祕傳と僞り。又諸宗の學者。宗
J09_0045B31: 宗の安心を念佛に加へて。有智の爲には大師もかく
J09_0045B32: こそ勸め玉はめなど語りて。諸の滅後の男女にまた
J09_0045B33: 大師の御心を疑はしめんも測りがたしと。遠く慮は
J09_0045B34: かり玉へども。是非の論談は。無窮なるべければ。

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