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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0043A01: るなり。いかなる滅後の他人背徒なりとも此御遺誓
J09_0043A02: に向つて。またいかに吾大師を誣奉らんや。されば
J09_0043A03: 三心四修の名目を削りすてて。安心作業の意義を包
J09_0043A04: 擧し。滅後の邪義を言外に防玉ふ事。あに文章の妙
J09_0043A05: にあらずや。
J09_0043A06: 扨此段に至て。但三心四修と申事の候は。と斷り玉
J09_0043A07: ふに。亦自ら二意を含めり。一には重て邪義を防玉へ
J09_0043A08: り。その意は。又背徒の中に。三心は如來の三心に
J09_0043A09: して。甚深廣大の法なれば。貪瞋具足の凡夫などの
J09_0043A10: 發すべき心にはあらず。凡夫はただ如來の三心に歸
J09_0043A11: 命するを。三心具足の行者とは云ふなりと談じ。又四
J09_0043A12: 修は菩薩の作業なれば。これもまた甚深廣大の法に
J09_0043A13: して。凡夫の及ぶ修行にはあらず。凡夫は極樂に往
J09_0043A14: 生して。菩薩となりて後に。淨土にて此四修を修行
J09_0043A15: するなり。ただよく本願の深意をだにも。領解すれ
J09_0043A16: ば。三心四修を具せざれども。最初の一念に淨業圓
J09_0043A17: 滿して。往生し畢ぬと云ふ邪義を勸めて。これ吉水
J09_0043B18: 祕密の口傳なりと僞りける輩もありけり。然れは
J09_0043B19: これらの人。前ノ段に三心四修の名目を書載せ玉はざ
J09_0043B20: るを見ては。さればこそ。大師も年比は。かりの方便
J09_0043B21: に。三心四修を。やすやすとすすめ玉ひしかども。
J09_0043B22: まことは如來の三心。菩薩の四修にして。凡夫の法に
J09_0043B23: はあらざる故に。末期には。御眞實を示して。三心
J09_0043B24: 四修の名をだにも。出し玉はず。大師の祕傳ここに
J09_0043B25: 顯れたりと僞りて。却てこの遺誓を邪義の證文に備
J09_0043B26: へて法に因て奸をなす人有るべし。これによりて。
J09_0043B27: 此段の意は。但し三心四修と申事は。背徒の思ふ樣
J09_0043B28: なる。凡夫の具しがたき。佛菩薩の三心四修にはあ
J09_0043B29: らず。ただ疑なく往生するぞと思ひ取て。ひたと念
J09_0043B30: 佛申す人には。三心四修の名をだにしらぬ。無智の人
J09_0043B31: までも。自然にやすく具足して闕くることなき法な
J09_0043B32: るぞと云ふ義を斷らせ玉へり。此時かの如來の三心。
J09_0043B33: 菩薩の四修。これ吉水の祕傳なりと云へる僞り。み
J09_0043B34: な顯はれにしかば。男女の疑は。跡なくはれたり。

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