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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0039A01: 魔安心の怨敵なり。あひ構へて。行者よくよく用心
J09_0039A02: して敬てこれを遠ざくべし。あへて馴れ親しむこと
J09_0039A03: なかれ。されば善導大師。二河白道の譬の中に西に
J09_0039A04: 向うて白道を行くこと一分二分すれば東の岸に羣賊
J09_0039A05: 等あつて。喚で云く。この道は嶮惡なり過ぐること
J09_0039A06: かなはじ。必ず死なんこと疑なし。仁者回へり來れ
J09_0039A07: 我等すべて惡心にて。相向ふにはあらずと云ふ喩を
J09_0039A08: 擧けて。これは。別解。別行。惡見の輩が。詐り親し
J09_0039A09: みて。みだりに見解を説きてたがひに惑亂するに喩
J09_0039A10: ふるなりと。釋し玉へるは是なり。行者その喚聲を
J09_0039A11: 聞くといへども。さらに顧みず。一心に直に進んで
J09_0039A12: 白道を念じて行くべしと。ねんごろに。すすめ玉ふぞ
J09_0039A13: かし。行者ふかく察すべし。すでに御遺誓の安心起
J09_0039A14: 行に違ひぬる上は吉水の正義に外れて。淨土宗の本
J09_0039A15: 意にはあらざりけりと。思ひ切て。耳にも聞き入れ
J09_0039A16: ず。更にわきめもふらず。願行具足の稱名を。决定
J09_0039A17: 不退に相續すべし。一定と思へば一定。不定と思へ
J09_0039B18: ば。やがて不定となる。努力心をたぢろくべからず。
J09_0039B19: 夫娑婆得道の修行は。有相の信願にては。悟りがた
J09_0039B20: し。定力なければ心みだれ。慧力なければ心くらき
J09_0039B21: 故なり。故に專ら定慧をはげまして。自力の斷證を
J09_0039B22: 求むる故に。たとひ念佛すれども。觀心參究を加へ
J09_0039B23: ざれば。悟を開き難ければ。他宗の修行に。理觀參
J09_0039B24: 究を貴むは。勿論の事なり。さて淨土得生の修行は。
J09_0039B25: それとは。はるかに替れり。自力の定慧の分にては。
J09_0039B26: 報土得生の引業が成じがたければ。ひたすら。有相
J09_0039B27: の信願をはげまして他力の引接を仰ぐなり。信心に
J09_0039B28: あらざれば。佛願に乘ぜず。願心にあらざれば。往
J09_0039B29: 業を成ぜざる故なり。かれは得道。これは得生。所
J09_0039B30: 求の標的が遙かに異なれば。能求の安心もまた遙
J09_0039B31: かに別なりと云ふ理りを。よくよく思辨ふべし。さ
J09_0039B32: れば。得道の宗には。をのづから得道の法あり。得
J09_0039B33: 生の宗には。をのづから得生の法ありて。道同じか
J09_0039B34: らざれば。相爲に謀らず。さるを。己己が執ずる所の。

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