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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0035A01: 所歸の佛を行とする故に。歸佛の一念に。願行具足
J09_0035A02: するを。本願の念佛と名く。あに無行の失に墮せん
J09_0035A03: やと訇る輩もあり。夫所歸の佛身があればこそ。能
J09_0035A04: 歸の念をば。おこせ。されば所歸を能歸に合せて。た
J09_0035A05: だこれ歸命にして。またこれ發願なれば。ことごと
J09_0035A06: く安心なり。然に稱名の行を挾まざる故に。猶廻向
J09_0035A07: の義をさへ闕きたり。なんぞ無行の責をのがれんや。
J09_0035A08: 或は又。この歸佛の一念を。往生の引業として。こ
J09_0035A09: の上に諸行を修して。滿業とする故に。願行具足せ
J09_0035A10: りと云ふ輩もあり。これはかへりて。雜行雜修の失
J09_0035A11: に墮ちて。專修專念の正宗を失へり。なんぞ論ずるに
J09_0035A12: 足らんや。その上本願念佛はただ引業とのみ成りて。
J09_0035A13: 滿業の功德なしと。おもへる事。その咎ますます甚
J09_0035A14: し。これみな本願の念佛を。稱名にはあらずと。思ひ
J09_0035A15: 違へる邪執より。事をこりて。種種の戯論には及べ
J09_0035A16: るなり
J09_0035A17: 又昔し成覺房の意は。最初發心稱名の一念に。願行
J09_0035B18: 具足するゆゑに。立どころに淨業圓滿して。即便往
J09_0035B19: 生し畢ぬ。已に極樂の聖衆と成て。不退轉を得たり。
J09_0035B20: 此後さらに何事を求めてか。また稱名をも勵み。願
J09_0035B21: 行をも運ばんや。もし此上なを助玉へとも願ひ。又
J09_0035B22: 稱名をも勵まん人は。これ一念往生の本願を信ぜざ
J09_0035B23: る。疑惑の人なれば。いかに稱名相續すとも。往生契
J09_0035B24: ふべからずと立てて。願行相續の行者を誹り嫌へり。
J09_0035B25: これは無間修。長時修の作業みな闕けぬれば。全く
J09_0035B26: 無願無行の失に墮せる。懈怠退轉の邪義なり
J09_0035B27: 又有人は。南無と云ふ言が。すなはち發願廻向なれ
J09_0035B28: ば。心に助玉へと思はねども。口に南無阿彌陀佛とだ
J09_0035B29: にも申せは。願行具足の稱名なり。なんぞ煩しく。
J09_0035B30: 助玉へと思はんやと。勸めし輩もあり。これは正し
J09_0035B31: く有行無願の邪義に墮せり。夫云ふ言に。思ふ心は
J09_0035B32: 顯るるを。心に思ふを安心と名け。口に出るをば起
J09_0035B33: 行に屬せり。もし思はぬ事を。心に違ひて。口に語
J09_0035B34: るはこれ妄語なり。佛をすかし奉るにあらずや。身

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