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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0034A01: 問うて云く。念佛の行者は必ず三心具足すべしとこ
J09_0034A02: そ侍るに。上來一向願行相續をのみ勸むる事は。いか
J09_0034A03: なる由ぞや 答て云く。經に願生彼國者。發三種心。
J09_0034A04: と云へりこれを。廣く云へば三心なり。要をとれば。願
J09_0034A05: の一字に納まる。已に三心を具しぬる人は。助玉へ
J09_0034A06: と願ずるに中に三心みな籠れり。助玉へと思ふ心に。
J09_0034A07: 僞なきは。至誠心なり。疑なきは深心なり行を兼ね
J09_0034A08: たるは廻向心なる故なり。もし誠なくは。虚假名利
J09_0034A09: の願行なり。もし信なくは疑惑不定の願行なれば。
J09_0034A10: みな本願にもれて。出離の行に非ず。今勸むる所は
J09_0034A11: 三心具足の願行相續の稱名にして。决定往生の正定
J09_0034A12: 業なりと知るべし
J09_0034A13: 然れば。念佛の行人は。僧俗を論ぜず。願行具足の
J09_0034A14: 稱名を相續して。一期不退に修行し。三佛兩祖の經
J09_0034A15: 釋に相應して。鎭西白簱の淸き流を汚す事なかれ。然
J09_0034A16: るに大師の御在世より滅後の今に至るまで。背徒の
J09_0034A17: 僞亂。他人の暗推。まちまちに競ひ起りて。願行相續
J09_0034B18: の稱名をさまたげ。吉水の正義を混亂せり。大師悲
J09_0034B19: 嘆のあまり。遠く滅後を慮はかりて。この極訓をば
J09_0034B20: 遺し玉へり。もし御遺誓に違はざる願行相續の安心
J09_0034B21: 起行ならば。自宗他宗の人をわかず。みな本願念佛
J09_0034B22: の正意を得たる。眞の淨土宗なりと知るべし。もし此
J09_0034B23: の義に相違せば。たとひ鎭西白簱の末學なりと名の
J09_0034B24: るとも。みな吉水の相承に背馳せる。滅後の邪義な
J09_0034B25: りと知るべし
J09_0034B26: 然るに。昔し背徒の中に法本房の意は。本願の念佛
J09_0034B27: は。實は稱名にはあらず。阿彌陀佛に一念歸命する
J09_0034B28: 時。即はち淨業圓滿して即便往生するを。眞の念佛
J09_0034B29: と名く。念の字は思ふとこそよめ。稱ふるとは讀ずと
J09_0034B30: 勸めて。六字の稱名を嫌ひ蔑せり。夫歸命の念は。ま
J09_0034B31: たこれ發願にして。ただこれ安心なり。またく稱名の
J09_0034B32: 起行なければ。此義は願行具足の正宗に背きて正し
J09_0034B33: く有願無行の邪義に墮せり。又稱名にあらずは。なに
J09_0034B34: をか。相續せんや。或は又。能歸の心は願にして。

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