浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z14_0358A01: | さてか樣の義に付ても。思ふことなり。和人は。文章 |
Z14_0358A02: | をかく。文字の吟味を。すると云者も。餘り氣を付す |
Z14_0358A03: | ぎて。反て唐人の。語路を疑ひ。殊の外。譯もなき沙 |
Z14_0358A04: | 汰を。云ふこと多し。今の談義主も。亦この類なり。近 |
Z14_0358A05: | くは。かの𤍠の字などにて知るべし。予先年。寄歸傳 |
Z14_0358A06: | に依て。寒國のことを。寒鄕と使ひたれば。去る文章 |
Z14_0358A07: | を。唐人風に。かくと云ふ儒者。難じて云。寒鄕とは。 |
Z14_0358A08: | 貧なる鄕のことなり。暖國の對に用るは。和語なり |
Z14_0358A09: | と。云云又去る文字に精しく。文章もよしと云律師。 |
Z14_0358A10: | 彌陀經の。阿僧祇劫說の。劫の字を。和人の加增なり |
Z14_0358A11: | と。云る由をも聞けり。凡そ文字を。吟味すると云ふ |
Z14_0358A12: | にも。か樣のこと。澤山あり。然るに。世に博學多才に |
Z14_0358A13: | て。講釋をも。よくすると云ふ人に。文字學に。心を留 |
Z14_0358A14: | めず。又大事とも思はず。一生。唐の語路を。知らで暮 |
Z14_0358A15: | すも。また甚だ多し。か樣の人は。縱ひ白首まで。頭燃 |
Z14_0358A16: | を拂ふ樣に。唐の書を詠めても。曾て其義に。通ぜざ |
Z14_0358A17: | ること。喩へば唐人の。和學や。假名遣ひの。按排を知 |
Z14_0358B01: | らずして。歌學をするが如し。其上。か樣に云ふをも。 |
Z14_0358B02: | 合點せず。結句。疑はしく思ふなり。これ他なし。元來 |
Z14_0358B03: | 自分に。文字の起りを。知らざれば。文字學問に。信心 |
Z14_0358B04: | が起らぬ。故ぞかし。但しか樣の人は。總て論ずるに |
Z14_0358B05: | も。及ばぬなり。然れば和人にて。唐の書を讀み。唐學 |
Z14_0358B06: | 問をせんと。思はむ人は。まづ第一に。文字の菩提心 |
Z14_0358B07: | を發すべし。若しこの心を。起さゞれば。一生の學問。 |
Z14_0358B08: | 徒らに施すなり。但し文字の發心。旣に久しき者にて |
Z14_0358B09: | も。やゝもすれば。かの寒鄕や。劫の字や。安樂義を疑 |
Z14_0358B10: | ふ樣なる。和情の垢の。ぬけ難きは。これが和人の。悲 |
Z14_0358B11: | しさなり。若しこの垢が。ぬけぬれば。そこで。文字の |
Z14_0358B12: | 看讀が唐人風に。なりたと云ふ者なり。若しこの垢 |
Z14_0358B13: | の。ぬけぬ內は。縱ひ手を班馬に藉り。肩を韓柳に摩 |
Z14_0358B14: | して。上先秦三代の。文字に遡るとも。更に和語の氣 |
Z14_0358B15: | 習は。除かぬなり。よく〱。用心すべし。其內。安樂 |
Z14_0358B16: | 義を疑ふ人の文字は。かの劫の字を嫌ふ。律師などよ |
Z14_0358B17: | りも。語を下すこと。卑弱にして。和語もまた多し。あ |