浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z14_0019A01: | 兩翼。車の兩輪の如くにて。自由自在なることなり。 |
Z14_0019A02: | 末世の愚癡無智。此修行は。なるまじきことといへど |
Z14_0019A03: | も。左樣にてはなし。女にも。男にも。貴にも。賤にも。 |
Z14_0019A04: | 智慧聰明なる生れつきの人をゝし。能敎へ。能習ひた |
Z14_0019A05: | らば。なるまじきことにてなし。只志しなく。敎へや |
Z14_0019A06: | うのわるきゆへなり。昔しの龍女の作佛せしは。畜生 |
Z14_0019A07: | なり。觀經の當機なる韋提希夫人や。五百の侍女は。 |
Z14_0019A08: | 皆歷々の女人なり。六祖大師は。越前のからうすふみ |
Z14_0019A09: | のやうなる人なり。石鞏禪師は。奧山の獵師なり。そ |
Z14_0019A10: | れでも。さとりが開。大祖師となれり。日本の橘皇后 |
Z14_0019A11: | は。禪を悟りて。もろこしの。山のあなたに。たつ雲 |
Z14_0019A12: | は。こゝにたく火の。煙りなりけりと。よみ玉へり。此 |
Z14_0019A13: | 歌を。去人。隔レ山見レ煙。早知二是火一之意也と云て。比量 |
Z14_0019A14: | 智の意と云り。禪を嘗て知ぬ云分なり。此歌などは。 |
Z14_0019A15: | 活句と云ものなれば。義理の付られぬことなり。千代 |
Z14_0019A16: | 野と云女は。餘り遠き世の人には非ず。美濃國。武義 |
Z14_0019A17: | 郡。松見寺と云尼寺の。仕女なり。菜つみ。水くむもの |
Z14_0019B01: | なりしが。禪の工夫をして。終に悟りが開けて。とや |
Z14_0019B02: | かくと。巧みし桶の。そこぬけて。水たまらねば。月も |
Z14_0019B03: | やどらずと。讀たり。此歌。世上には。千代野をが。い |
Z14_0019B04: | たゞく桶の。そこぬけて。水たまらねば。月影もなし |
Z14_0019B05: | と。覺へてをるなり。千代野が傳と云ものには。前の |
Z14_0019B06: | 通りの歌なり。此歌の意は。禪宗の嫌ふこと。入ぬ註 |
Z14_0019B07: | 釋なれども。緣影の無體なることを知て。本心の無相 |
Z14_0019B08: | 空寂なる氣味を。合點したるなるべし。無相空寂と云 |
Z14_0019B09: | に付ても。通敎の無相空寂あり。別敎の無相空寂あ |
Z14_0019B10: | り。圓敎の無相空寂あり。圓敎の無相空寂でなけれ |
Z14_0019B11: | ば。卽心念佛の心體とは云れぬなり。千代野が味ひた |
Z14_0019B12: | る處は。定て通敎の無相空寂か。別敎の無相空寂なる |
Z14_0019B13: | べし。如レ此なれば。貴きも。賤きも。女人にても。學問 |
Z14_0019B14: | せぬ文盲なる男にても。志あれば。道理は能悟るもの |
Z14_0019B15: | なり。今の世とても。志あり。善敎へを受たらば。智慧 |
Z14_0019B16: | 明かに。なるまじきものにてはなし。智慧明かになり |
Z14_0019B17: | たらば。淨土を求むることは。入まじと疑べけれど |