ウィンドウを閉じる

J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0441A01: べき宿縁や有けん。尾三の兩國においては。士庶の
J18_0441A02: 歸敬。特に夥かりき。三州荒井山に。九品院を建立し
J18_0441A03: て。念佛の道塲となしぬ。其外浪華源正寺。名古屋
J18_0441A04: 光照院等を中興して。捨世道塲と定め。持律の僧
J18_0441A05: 伽。若干人を安す。天保十三寅年。八月廿三日寂
J18_0441A06: す。其委細にいたりては。別傳にゆづりて。例の略
J18_0441A07: す。轉蓮社入譽と稱す。
J18_0441A08:
J18_0441A09: 信州唐津阿彌陀寺本察和尚
J18_0441A10: 和尚。始の名は德誠。上總國の産なり。勝尾山に詣
J18_0441A11: して。弟子となり。信州攝化の時。隨從す。唐澤の
J18_0441A12: あみだ寺は。彈誓上人の開基にて。閑寂の地なれ
J18_0441A13: ば。師の留錫の地に奉らんと。諸人請申けるに。我
J18_0441A14: は念佛弘通を旨として。一處不住の身なり。地を占
J18_0441A15: て住べからずと辭し玉ひけり。然ば法弟の内。一人
J18_0441A16: 給はるべしと乞申たるに。本察しかるべしとて命ぜ
J18_0441A17: らる。かの寺はひさしく住あれたり。雨漏。たたみ
J18_0441B18: 朽て。棲べきやうなしと。聞え申ければ。師。訶し
J18_0441B19: ての給はく。瓧摧け雨もらんには。木の下に立行せ
J18_0441B20: よ。席朽てやすからずは。石上に安坐せよ。食物と
J18_0441B21: もしくとも。餓鬼趣の如にはあらじ。霜雪深くと
J18_0441B22: も。八寒にはまさるらん。何かおそるる事のあるべ
J18_0441B23: きと。垂示せられたるに。夢の覺たるやうにおぼえ
J18_0441B24: て。やがて承諾して。檀越某の宅へ行て。師の命を
J18_0441B25: 傳ければ。いとよろこびて。暫休息し給へとて。其
J18_0441B26: 家に十日ばかり留られけり。今日は寺へ入玉へと有
J18_0441B27: ければ。往て見るに。聞しにはたがひて屋を修し。
J18_0441B28: 席を新にし。つちをもり。石を敷。卉木光を生じ。
J18_0441B29: 鐘磬こゑをあらたにしたりしかば。師の垂示に慚愧
J18_0441B30: して。後江戸に來り。其事を白し。師の餘德を謝し
J18_0441B31: 奉りけり。文政八丙年。四月二十三日寂す。荼毘を
J18_0441B32: 經といへども。舌根依然として殘れり。和尚至て辯
J18_0441B33: 舌利達なれども。一生妄語せぬ人なり。舌根の殘た
J18_0441B34: るそのいはれなるべしと。人人申あひける。正蓮社

ウィンドウを閉じる