浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0438A01: | 寂を知。こは文政元年。九月下旬の事なりき。のち |
J18_0438A02: | に備後尾の道。安國屋の宅に寓して。穀を避。四十 |
J18_0438A03: | 八夜の別行を勤る事。前後におよそ四十八度也と |
J18_0438A04: | ぞ。妙花光明の好相。記するにいとまあらず。夢の |
J18_0438A05: | 記一卷。三昧感得記一卷あり。藝州甘露庵密成律師 |
J18_0438A06: | の記する所なり。天保十一子年。十二月十三日。端 |
J18_0438A07: | 坐合掌して寂す。進蓮社策譽と稱す。 |
J18_0438A08: | |
J18_0438A09: | 紀州若山無量光寺本辨和尚 |
J18_0438A10: | 和尚は。泉州岸和田の産なり師の勝尾留錫のころ。 |
J18_0438A11: | 發心して。弟子となれり。天性溫諄にして。奉事師 |
J18_0438A12: | 長の孝心。たくらぶべきものなし。日沒の後は。必 |
J18_0438A13: | 罩臉をかけて。御肩うち。御腰撫などせる事。年ご |
J18_0438A14: | ろ。一夕もおこたることなし。師入寂の後。或時頻 |
J18_0438A15: | に齒の痛ことあり。其夜。師の手づから。和尚の口 |
J18_0438A16: | 中へ。黑藥を入給ふと見て。夢覺たるに。齒疼は即 |
J18_0438A17: | 時にやみて唇のかたはらに。柳葉一枚つきて有しと |
J18_0438B18: | ぞ。常に師恩をおもふ心。深き餘りに。いかにして |
J18_0438B19: | か。師の降誕ありし紀國に。一伽藍を創て。師の遺 |
J18_0438B20: | 德をして。ながく世に傳へ。自他念佛の勝縁とな |
J18_0438B21: | し。慈恩の萬一に。報答せんものをと。旦夕この事 |
J18_0438B22: | をのみ思惟し。或時法兄本佛に談じけるに。よくい |
J18_0438B23: | はれたり。貧道が素志も亦しかり。いままさに時至 |
J18_0438B24: | れり。因循すべきにあらずと。答られしにぞ。一鉢 |
J18_0438B25: | 飄然として。紀の若山に至。ここに容膝の地を占 |
J18_0438B26: | て。日日市中を分衞するに。熱を冐し。寒を衝て。 |
J18_0438B27: | 一日もおこたる事なし。かかりしほどに。佛天護法 |
J18_0438B28: | の冥助にや。前一位亞相公。この事を聞し召。その |
J18_0438B29: | 至誠心を感じ給ひ。自ら布金の檀主として。出格の |
J18_0438B30: | 御外護あらせられしかば。諸人響の如應じ。やが |
J18_0438B31: | て。一精舍を建立す。乃無量光寺と名ぜらる。これ |
J18_0438B32: | よりのち紀の國に。師の遺跡。五か院まで。建立せ |
J18_0438B33: | られたるは。みな和尚の功績といふべし。嘉永元申 |
J18_0438B34: | 年。十二月六日。衆とともに。同音に念佛しながら。 |