ウィンドウを閉じる

J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0438A01: 寂を知。こは文政元年。九月下旬の事なりき。のち
J18_0438A02: に備後尾の道。安國屋の宅に寓して。穀を避。四十
J18_0438A03: 八夜の別行を勤る事。前後におよそ四十八度也と
J18_0438A04: ぞ。妙花光明の好相。記するにいとまあらず。夢の
J18_0438A05: 記一卷。三昧感得記一卷あり。藝州甘露庵密成律師
J18_0438A06: の記する所なり。天保十一子年。十二月十三日。端
J18_0438A07: 坐合掌して寂す。進蓮社策譽と稱す。
J18_0438A08:
J18_0438A09: 紀州若山無量光寺本辨和尚
J18_0438A10: 和尚は。泉州岸和田の産なり師の勝尾留錫のころ。
J18_0438A11: 發心して。弟子となれり。天性溫諄にして。奉事師
J18_0438A12: 長の孝心。たくらぶべきものなし。日沒の後は。必
J18_0438A13: 罩臉をかけて。御肩うち。御腰撫などせる事。年ご
J18_0438A14: ろ。一夕もおこたることなし。師入寂の後。或時頻
J18_0438A15: に齒の痛ことあり。其夜。師の手づから。和尚の口
J18_0438A16: 中へ。黑藥を入給ふと見て。夢覺たるに。齒疼は即
J18_0438A17: 時にやみて唇のかたはらに。柳葉一枚つきて有しと
J18_0438B18: ぞ。常に師恩をおもふ心。深き餘りに。いかにして
J18_0438B19: か。師の降誕ありし紀國に。一伽藍を創て。師の遺
J18_0438B20: 德をして。ながく世に傳へ。自他念佛の勝縁とな
J18_0438B21: し。慈恩の萬一に。報答せんものをと。旦夕この事
J18_0438B22: をのみ思惟し。或時法兄本佛に談じけるに。よくい
J18_0438B23: はれたり。貧道が素志も亦しかり。いままさに時至
J18_0438B24: れり。因循すべきにあらずと。答られしにぞ。一鉢
J18_0438B25: 飄然として。紀の若山に至。ここに容膝の地を占
J18_0438B26: て。日日市中を分衞するに。熱を冐し。寒を衝て。
J18_0438B27: 一日もおこたる事なし。かかりしほどに。佛天護法
J18_0438B28: の冥助にや。前一位亞相公。この事を聞し召。その
J18_0438B29: 至誠心を感じ給ひ。自ら布金の檀主として。出格の
J18_0438B30: 御外護あらせられしかば。諸人響の如應じ。やが
J18_0438B31: て。一精舍を建立す。乃無量光寺と名ぜらる。これ
J18_0438B32: よりのち紀の國に。師の遺跡。五か院まで。建立せ
J18_0438B33: られたるは。みな和尚の功績といふべし。嘉永元申
J18_0438B34: 年。十二月六日。衆とともに。同音に念佛しながら。

ウィンドウを閉じる