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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0434A01: 黄昏に一本松といへる山に登りて。西の空を伏拜た
J18_0434A02: りしに。廓然として心に徹する事ありて。俗縁を辭
J18_0434A03: して。津の國勝尾山にのぼり師に謁して。剃度を乞。
J18_0434A04: 名を本佛と號す。二十歳なりき。その前日師の玉は
J18_0434A05: く。明日しかじかの人來る後には門下の高足となる
J18_0434A06: べしとの玉ひけりとぞ。是より終身。師の坐下を離
J18_0434A07: れず。竊に師の行化を助。日の力を極て難らず。多
J18_0434A08: 年師の攝化に。障碍なからしむるはひとり和尚の力
J18_0434A09: なり。されば師も終焉に臨で。この事を和尚に謝せ
J18_0434A10: れしとぞ途を行にも。經論を携てこれを讀。あるは
J18_0434A11: 燭滅する時は。線香の光に就て。内典を閲するな
J18_0434A12: ど。師の聞給ひて。門下には餘業を禁ずといへど
J18_0434A13: も。汝にのみ持名の暇書を讀事をゆるすとぞ仰られ
J18_0434A14: ける。文化十一年六月。師の東下に從ひ。小石川傳
J18_0434A15: 通院に寓し。のちに師一行院に移らせ給ふ時。和尚
J18_0434A16: をもて。その住持とし給ひぬ。文政元年十月六日。
J18_0434A17: 師入滅の夕にいたりて和尚に衣鉢をぞ傳給ふ。和尚
J18_0434B18: 遣訓を遵奉し。能大衆を課して。常に淨業を修せし
J18_0434B19: め。緇衣を披き。蔽屐を踄。その芳跡。師の在しし
J18_0434B20: 時に。露違事なし。其三昧中勝相は。佛前に紅紫二色
J18_0434B21: の光を現じ或は黄金の簑衣を現。或は滿室に舍利を
J18_0434B22: 現ずるなど。種種の靈異。數ふるにいとまあらず。
J18_0434B23: 別傳に讓て例の略す。記憶人に勝れて。一たび目を
J18_0434B24: 經れば。終身忘れずとぞ。人となり沈毅豪爽にし
J18_0434B25: て。一日に三十餘里の路を步み。雙手に百斤の重き
J18_0434B26: を擧。或儒生。試に和漢古今の成敗。及び經史子集
J18_0434B27: の外典を叩に。了了として掌を指が如し。就中地理
J18_0434B28: 學に至りては。最も其精妙を極めらる。儒生大に驚
J18_0434B29: て。果して不世出の人也とて。就て内典をも學びし
J18_0434B30: とぞ。終身隱操を全くして。尋常道俗の謁見を謝
J18_0434B31: せらる。おのれ行誡。和尚の德行を欽む事殆三十餘
J18_0434B32: 年。臨末に先だつこと七日にして。始て謁する事を
J18_0434B33: 得たり。神情閑雅にして。眉目淸秀。いまだ曾て。
J18_0434B34: 沈痾の身に在人とは見えず語言朗朗として。法門の

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