浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0434A01: | 黄昏に一本松といへる山に登りて。西の空を伏拜た |
J18_0434A02: | りしに。廓然として心に徹する事ありて。俗縁を辭 |
J18_0434A03: | して。津の國勝尾山にのぼり師に謁して。剃度を乞。 |
J18_0434A04: | 名を本佛と號す。二十歳なりき。その前日師の玉は |
J18_0434A05: | く。明日しかじかの人來る後には門下の高足となる |
J18_0434A06: | べしとの玉ひけりとぞ。是より終身。師の坐下を離 |
J18_0434A07: | れず。竊に師の行化を助。日の力を極て難らず。多 |
J18_0434A08: | 年師の攝化に。障碍なからしむるはひとり和尚の力 |
J18_0434A09: | なり。されば師も終焉に臨で。この事を和尚に謝せ |
J18_0434A10: | れしとぞ途を行にも。經論を携てこれを讀。あるは |
J18_0434A11: | 燭滅する時は。線香の光に就て。内典を閲するな |
J18_0434A12: | ど。師の聞給ひて。門下には餘業を禁ずといへど |
J18_0434A13: | も。汝にのみ持名の暇書を讀事をゆるすとぞ仰られ |
J18_0434A14: | ける。文化十一年六月。師の東下に從ひ。小石川傳 |
J18_0434A15: | 通院に寓し。のちに師一行院に移らせ給ふ時。和尚 |
J18_0434A16: | をもて。その住持とし給ひぬ。文政元年十月六日。 |
J18_0434A17: | 師入滅の夕にいたりて和尚に衣鉢をぞ傳給ふ。和尚 |
J18_0434B18: | 遣訓を遵奉し。能大衆を課して。常に淨業を修せし |
J18_0434B19: | め。緇衣を披き。蔽屐を踄。その芳跡。師の在しし |
J18_0434B20: | 時に。露違事なし。其三昧中勝相は。佛前に紅紫二色 |
J18_0434B21: | の光を現じ或は黄金の簑衣を現。或は滿室に舍利を |
J18_0434B22: | 現ずるなど。種種の靈異。數ふるにいとまあらず。 |
J18_0434B23: | 別傳に讓て例の略す。記憶人に勝れて。一たび目を |
J18_0434B24: | 經れば。終身忘れずとぞ。人となり沈毅豪爽にし |
J18_0434B25: | て。一日に三十餘里の路を步み。雙手に百斤の重き |
J18_0434B26: | を擧。或儒生。試に和漢古今の成敗。及び經史子集 |
J18_0434B27: | の外典を叩に。了了として掌を指が如し。就中地理 |
J18_0434B28: | 學に至りては。最も其精妙を極めらる。儒生大に驚 |
J18_0434B29: | て。果して不世出の人也とて。就て内典をも學びし |
J18_0434B30: | とぞ。終身隱操を全くして。尋常道俗の謁見を謝 |
J18_0434B31: | せらる。おのれ行誡。和尚の德行を欽む事殆三十餘 |
J18_0434B32: | 年。臨末に先だつこと七日にして。始て謁する事を |
J18_0434B33: | 得たり。神情閑雅にして。眉目淸秀。いまだ曾て。 |
J18_0434B34: | 沈痾の身に在人とは見えず語言朗朗として。法門の |