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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0424A01: より勝れて。亮亮として門外までも響けり助音の衆
J18_0424A02: 僧は。精神つかれたれども。師はいささも勞がはし
J18_0424A03: き氣色あらざりき。巳の中刻。齋食きこしめす。大
J18_0424A04: 基和尚の。御風味いかにと問れけるに。甘露の如し
J18_0424A05: とぞ答たまひける。筆硯をとのたまひて
J18_0424A06: 南無阿彌陀佛生死輪廻の根をたたば
J18_0424A07: 身をも命もをしむべきかは
J18_0424A08: とかかせ給ひて筆を投げ。莞爾として臥給ぬ。念佛
J18_0424A09: のこえ少しひくくならせ給へりとおもへば。泊然と
J18_0424A10: して絶させ玉ひぬ。實に文政元戊寅のとし十月六日
J18_0424A11: 酉の中刻也。御齡は六十のうへひとつをこえさせ玉
J18_0424A12: へり。嗚呼法幢倒れたり。何の日か再在世の眞を仰
J18_0424A13: ん。法梁摧たり誰人か。とこしなへに生死の津を導
J18_0424A14: ん鶴林涅槃の夕。世間眼滅と唱し悲も。今更におもひ
J18_0424A15: あはせられて。道俗貴賤みな老妣を喪するが如にな
J18_0424A16: ん歎あひける同月九日寺のうしろに葬り參らす御導
J18_0424A17: 師は增上寺大僧正典海大和尚ぞつとめ給へりける下
J18_0424B18: 炬の御辭には大慈菩薩の法語を擧げて。即是阿彌陀
J18_0424B19: 佛と唱させ給へりけるに。人皆みのけいよだちて覺
J18_0424B20: 侍りしとぞ。此日寺の四面群參おびただしくて。大
J18_0424B21: 僧正の御輿を通參らすことあたはず。門前より下乘
J18_0424B22: し給ひける。
J18_0424B23: 文政二年の秋。五輪の塔を造りて。墓石とす。高一
J18_0424B24: 丈五尺ばかり。廣厚これにかなふ。攝州の吉田喜平
J18_0424B25: 次。御影石をきり出し。海上を運送し供養し奉れ
J18_0424B26: り。石燈臺二基。高さ一丈ばかりなるべし。浪華の
J18_0424B27: 小橋屋淸翁供養せり。褐銅香鼎一基。同所池田屋某
J18_0424B28: 獻備す。
J18_0424B29: 文政七年甲申のとしは。師の七回忌なり。故法親王
J18_0424B30: 一品の宮大光明院と稱し奉御室より。德本行者往生之地と書せ
J18_0424B31: 給ふ遍額を賜ふすなはち内陣にかかぐ。追遠の御こ
J18_0424B32: ころざしなりとぞ。
J18_0424B33: おなじ御室。關東御下向の事おはしましき。一行院
J18_0424B34: に詣させ給ひて。行者の像前にて。幾度か御拜あ

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