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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0421A01: 懇に仰られぬ。これによりて大僧正より公に聞え
J18_0421A02: て。小石川一行院をもて捨世道塲と定め。師の行化
J18_0421A03: の地となし參らせて。今しばし關東にて攝化あるべ
J18_0421A04: きよし申させ給ひけり。師は素より一處不住の境界
J18_0421A05: におはしませば。住處のために心を繼がれ玉ふべき
J18_0421A06: よしもあらねど。やごとなき嚴命。もだし難く。
J18_0421A07: 道俗の哀慕も。さすがに捨がたくて。今はとて遂
J18_0421A08: に此地にとどまり給ひぬ。此よし傳承る貴賤老若。
J18_0421A09: 釋迦牟尼佛の。ふたたび穢土に示現し給ふやうに。
J18_0421A10: よろこびいひさわぎて。例の群集いふばかりなかり
J18_0421A11: き。こは文化十四丑歳。十月のころなり。十一月の
J18_0421A12: 初旬。川越の蓮馨寺をはじめ。瀧山大善寺および。
J18_0421A13: 遠近寺院の請に應じ給ふこと。かぞふるにいとまあ
J18_0421A14: らず。八王寺の驛に。津戸三郞爲守の後裔とて。津戸
J18_0421A15: 六右衞門といへるものあり。家に三幅の名號を藏せ
J18_0421A16: り。こは元祖大師の眞跡にして。三心の名號とぞよ
J18_0421A17: びける。其かみ先祖爲守へ。大師の給はりしよし。
J18_0421B18: 第一幅の上頭に。至誠心の三字を旁行に記し。下に
J18_0421B19: 六字名號を書し源空の二字を欵す。深心。回向心の
J18_0421B20: 幅もおなじさまなり。師。見玉ひて。大師に因縁ふ
J18_0421B21: かかりし子孫なればとて。六萬遍の日課を授與し。
J18_0421B22: 三心も四修もといへる御歌一首をぞ。書つかはされ
J18_0421B23: ける。
J18_0421B24: 霜月中旬。八王子をたたせ玉ひて。當麻の無量光寺
J18_0421B25: に法莚をひらかる。住持他阿上人深く歸仰せられ
J18_0421B26: て。六萬べんの日課を誓受せらる。此日雪いたく降
J18_0421B27: て寒も一しほなるに。堂の内外。群集の道俗。いさ
J18_0421B28: さかいとふ氣色もなくて結縁しけり。戸塚の淸源院
J18_0421B29: の法會には。剃髮の作法うけし男女三百六十四人な
J18_0421B30: り。神奈川の觀福寺は。同所の慶運寺に屬しつる
J18_0421B31: を。師の來往の御休息所と定たり。こは慶運寺主と。
J18_0421B32: 都下の僧衆と。同心隨喜してはかりたるなり。これ
J18_0421B33: により極月の八日まで。此處に留錫して。攝化し給
J18_0421B34: へり。參詣の道俗。日夜ひきもきらず。剃度の作法

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