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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0419A01: 德本行者傳下之卷
J18_0419A02:
J18_0419A03: 八月十七日。飛州高山大雄寺の請に應じて法筵を開
J18_0419A04: かる。結縁の道俗數をしらず。人人相議していへら
J18_0419A05: く。師の攝化唯事にあらず。願くは後の世までも傳
J18_0419A06: て結縁に備んには。名號を乞申さんにしかじ。幸松
J18_0419A07: 倉山に自然石あり。引おろして揮毫を乞ばやとて。
J18_0419A08: 其事を師に聞えければ。善方便なり。しかせよとの
J18_0419A09: 玉ふにぞ。やがてその石引出す。いま存在する處を
J18_0419A10: 見るに。長凡一丈四尺五寸。幅四尺餘。周り一丈一
J18_0419A11: 尺餘り也。臺石は龜のかたにて。周凡二丈四尺餘。長
J18_0419A12: 一丈にあまるへし。かばかりの名號塔又世に有べし
J18_0419A13: とも覺えずかかる大石を。嶮峻なる山阪引出ける事
J18_0419A14: なれば。其勞苦もおほかたならざるを。夜に日につ
J18_0419A15: とめて。運送力を盡したるなるべし。寺近くなりし
J18_0419A16: ころ。此石あやまりて水田に落入ぬ。泥土の底に埋
J18_0419A17: れて。如何ともすべきやうなし。みな忙然たるさま
J18_0419B18: なりけり。師。山門に登りて。皆みな念佛しながら
J18_0419B19: 引揚よ。あがるべきぞとのたもふに。人人力を得
J18_0419B20: て。師につきて念佛したりければ。其于隅の節に應
J18_0419B21: じて。この石。時を經ずして水田を出たり。人人ま
J18_0419B22: すます力を得て。やがて寺の庭上にぞ引居ける。こ
J18_0419B23: は縁山の安蓮社にすめる卓嶺上人。隨從して親しく
J18_0419B24: 此事を見られて。北國結縁の間の。最大の名號石な
J18_0419B25: りとぞかたられける。この地を發足ありて越中國。
J18_0419B26: 富山より。加州金澤に飛錫せらる。高岡を經て。金
J18_0419B27: 澤如來寺へ着せられたり。この往來に門中の寺院。
J18_0419B28: 送迎のため。奔走する人其數をしらず。金澤藩の前
J18_0419B29: 田主税。同舍弟内記。伽羅を供じて十念拜受し。六
J18_0419B30: 萬遍の日課を誓ふ。ここを出て今石動の大念寺。坂
J18_0419B31: 下の極樂寺。西岩瀨の醫王寺に攝化し玉ふ。此ころ
J18_0419B32: 富山侯の一族あまた詣らる。西願寺。大泉寺をへ
J18_0419B33: て。長圓寺へおもむき。越後糸魚川善導寺へいた
J18_0419B34: らる。此より高田大仙寺の請待を終として。九月上旬

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