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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0415A01: なりけり。その御床拂の日には。師を殊更に請ぜら
J18_0415A02: れて日課六萬稱をぞちかひ給ける。さればこの御舘
J18_0415A03: にまうのぼらせ給ひしこと。十六七度におよびぬ。
J18_0415A04: ただならざる御宿縁なりとて。人人尊びあへり。
J18_0415A05: 淸水菊千代殿。貞章院の御方がたの御許へ。請ぜら
J18_0415A06: れ給ふごとに。各御日課を誓せられて。説法御聽聞
J18_0415A07: あり。田安殿をはじめ。内外の君達の御歸依も。大
J18_0415A08: かた同し御さま也。又。貞章院の御かたには。わき
J18_0415A09: て御歸依厚くして。佛匠立慶に仰て。師の肖像造ら
J18_0415A10: せて。常常香花を供養し給へり。
J18_0415A11: 文化十二年秋のころ懇請によりて。伊豆相模を攝化
J18_0415A12: せらる。傳通院の大佛堂を立出られしは。八月廿六
J18_0415A13: 日なり。神奈川の驛より。中原の大松寺を初とし
J18_0415A14: て。小田原の心光寺。三島の長圓寺におもむかる。
J18_0415A15: 下田の稻田寺にいたられ。しばし此寺に留錫し給ひ
J18_0415A16: て。同所の海善寺。稻取の正定寺。八幡野の照明
J18_0415A17: 寺。伊東の淨圓寺。熱海の淸嚴院などに至り給ふ
J18_0415B18: に。いづくもおなじさまに。おびたたしき群集な
J18_0415B19: り。韮山の縣令江川氏の官舍にも。請じ申さるべき
J18_0415B20: なりしを俄に障る事ありて。種種のささげ物もたら
J18_0415B21: して。代參の者詣にけり。十月十一日に鎌倉におも
J18_0415B22: むかれ。光明寺に一宿せらる。貫首空譽大和尚の請
J18_0415B23: によられたる也。
J18_0415B24: 鎌倉巡拜のついで。大塔宮。幽閉の窟にて。懇に念
J18_0415B25: 佛回向し給ひし時師の道容悽愴として。平常にかは
J18_0415B26: り。高聲十念。傍人の耳をつらぬくばかりなり。侍
J18_0415B27: 者あやしみて後に問申ければ。師の給はく。よに氣
J18_0415B28: 高く衣冠し給ひたる貴人滿面に怒氣顯れいとおそろ
J18_0415B29: しき御姿の見えつるは。定て親王の怨魂。いまだ散
J18_0415B30: じ給はぬなるべし。あはれ觸光柔輭の利益をもて。
J18_0415B31: 永く鬪諍のちまたをのがれ。速に淨土に超生し給へ
J18_0415B32: かしと。念じ申たる也とぞ。の給ひける。
J18_0415B33: 英勝尼寺の戒光院殿は水府源公の姬君なり。はやく
J18_0415B34: より師の德を仰おぼし入られけるを。こたびはよき

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