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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0409A01: り。房籠をなんし給ける。然に。紀州公より。再仰
J18_0409A02: 言ありて。國内にて化益あらまほしきよし。只管に
J18_0409A03: 請ぜられけり。先には固辭し申されしかど。此たび
J18_0409A04: は。強て。もだすべきにあらずとて。其としの五
J18_0409A05: 月。歸國し給にければ。頓て。那加郡なる。和佐山
J18_0409A06: に庵室をぞ給りける。
J18_0409A07: 梶取の總持寺は。淨土宗西山派の本寺也。住持の大
J18_0409A08: 和尚は。篤學の聞ある人にて。師を年ごろ歸仰せら
J18_0409A09: れしに。幸にこの比歸國せさせ給へるをよろこび
J18_0409A10: て。文化九年五月廿日より。七日の別行をぞ乞申け
J18_0409A11: る。折ふし師は。痰痎をなやませ給けれど。國内化
J18_0409A12: 益のおほせを重んじ。かつは住持の懇請をも感しお
J18_0409A13: ぼして。此寺に留錫し給へり。日日の群集二萬人に
J18_0409A14: 餘りとぞ。御聲かれて。説法し給ふ事能はざれば。
J18_0409A15: 日日唯十念をのみ授られて。地獄にな落そ。念佛し
J18_0409A16: て極樂へ參れよとのみ高聲にの給ふ。これを聞人唯
J18_0409A17: 涙墮してぞ尊あへりける。阿波。淡路よりも。師の
J18_0409B18: 結縁あるよし傳聞て。日夜に詣來るもの船の數二百
J18_0409B19: 艘ばかりも若山の湊に碇泊したりしとぞ。紀州公。
J18_0409B20: 侍醫某をして。日日御藥を調ぜさせ給ひ。又立期とい
J18_0409B21: へるものを。晝夜侍せしめられて。按摩せさせ給ふ
J18_0409B22: に。かならず罩臉を用べきよし。命じ玉ひしとな
J18_0409B23: ん。御尊崇のいたり。比類なかりき。招かせ給ふ事
J18_0409B24: 屢屢なれば總持寺の別行終りて。同月の廿七日。貴命
J18_0409B25: に應じ給ふ。北島まで御迎の船五艘を出され。師の
J18_0409B26: 本船は。新に造出して。六挺の艫をかけらる。武田
J18_0409B27: 某。命を蒙て。御近侍三人水主頭をもて。護衞し午
J18_0409B28: の刻ばかりに。御館に着せらる。此館は。先君の御別業にて。畑御殿と稱す。
J18_0409B29: 師弟の御禮節をもて。御對面の御式いとおごそか
J18_0409B30: 也。列坐を賜て。十念請させ給ふ。この序をもて。
J18_0409B31: 一枚起請を講ぜしめらるるに。士女すべて合掌すべ
J18_0409B32: きよし。公自ら命ぜらる。御館の中にて。十念請ら
J18_0409B33: るること七處なり。送迎の御禮儀はもとより。御饗
J18_0409B34: 具どもに至るまで。都て淸潔なるべしとて。みな新

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