浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0409A01: | り。房籠をなんし給ける。然に。紀州公より。再仰 |
J18_0409A02: | 言ありて。國内にて化益あらまほしきよし。只管に |
J18_0409A03: | 請ぜられけり。先には固辭し申されしかど。此たび |
J18_0409A04: | は。強て。もだすべきにあらずとて。其としの五 |
J18_0409A05: | 月。歸國し給にければ。頓て。那加郡なる。和佐山 |
J18_0409A06: | に庵室をぞ給りける。 |
J18_0409A07: | 梶取の總持寺は。淨土宗西山派の本寺也。住持の大 |
J18_0409A08: | 和尚は。篤學の聞ある人にて。師を年ごろ歸仰せら |
J18_0409A09: | れしに。幸にこの比歸國せさせ給へるをよろこび |
J18_0409A10: | て。文化九年五月廿日より。七日の別行をぞ乞申け |
J18_0409A11: | る。折ふし師は。痰痎をなやませ給けれど。國内化 |
J18_0409A12: | 益のおほせを重んじ。かつは住持の懇請をも感しお |
J18_0409A13: | ぼして。此寺に留錫し給へり。日日の群集二萬人に |
J18_0409A14: | 餘りとぞ。御聲かれて。説法し給ふ事能はざれば。 |
J18_0409A15: | 日日唯十念をのみ授られて。地獄にな落そ。念佛し |
J18_0409A16: | て極樂へ參れよとのみ高聲にの給ふ。これを聞人唯 |
J18_0409A17: | 涙墮してぞ尊あへりける。阿波。淡路よりも。師の |
J18_0409B18: | 結縁あるよし傳聞て。日夜に詣來るもの船の數二百 |
J18_0409B19: | 艘ばかりも若山の湊に碇泊したりしとぞ。紀州公。 |
J18_0409B20: | 侍醫某をして。日日御藥を調ぜさせ給ひ。又立期とい |
J18_0409B21: | へるものを。晝夜侍せしめられて。按摩せさせ給ふ |
J18_0409B22: | に。かならず罩臉を用べきよし。命じ玉ひしとな |
J18_0409B23: | ん。御尊崇のいたり。比類なかりき。招かせ給ふ事 |
J18_0409B24: | 屢屢なれば總持寺の別行終りて。同月の廿七日。貴命 |
J18_0409B25: | に應じ給ふ。北島まで御迎の船五艘を出され。師の |
J18_0409B26: | 本船は。新に造出して。六挺の艫をかけらる。武田 |
J18_0409B27: | 某。命を蒙て。御近侍三人水主頭をもて。護衞し午 |
J18_0409B28: | の刻ばかりに。御館に着せらる。此館は。先君の御別業にて。畑御殿と稱す。 |
J18_0409B29: | 師弟の御禮節をもて。御對面の御式いとおごそか |
J18_0409B30: | 也。列坐を賜て。十念請させ給ふ。この序をもて。 |
J18_0409B31: | 一枚起請を講ぜしめらるるに。士女すべて合掌すべ |
J18_0409B32: | きよし。公自ら命ぜらる。御館の中にて。十念請ら |
J18_0409B33: | るること七處なり。送迎の御禮儀はもとより。御饗 |
J18_0409B34: | 具どもに至るまで。都て淸潔なるべしとて。みな新 |