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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0408A01: とて。例の錫杖つかせ給へるに。弟子たちもおくれ
J18_0408A02: じとて出たちぬ。あわただしき旅行なれども。人人
J18_0408A03: 聞傳けん。江州三井寺のほとり遊心庵。叡山の麓。
J18_0408A04: 靜光寺などにて。人人待奉り。請じければ。暫とて
J18_0408A05: 休息せらる。結縁夥き中。寺の僧も山の法師も。遠
J18_0408A06: く詣來て。説法聽聞したりき。いと殊勝なる事にぞ
J18_0408A07: 有ける。八幡の豪商大文字屋何某。この序をもて。
J18_0408A08: 請じ申ければ。竹生島の歸りにと約し給ひ。高島の
J18_0408A09: 眞光寺にて。五日の間。留錫し給ふ。住持の僧の案
J18_0408A10: 内にて。葵川より。夜をこめて船にめさせ給ふに。
J18_0408A11: 空うららかに。浪の音も聞えぬまでにて。竹生島
J18_0408A12: へぞつかせ給ふ。本宮にて。しばし法樂し給へる
J18_0408A13: 間。霞の如き薄雲一むら島を覆ひて。雨はらはらと
J18_0408A14: 降。尊天の納受なるべしなど人人申あひけり。いざ
J18_0408A15: 是より八幡へとて。船さし出せるに。忽風すさまじ
J18_0408A16: く吹。濤みなぎりたちて。如何ともすべきやうな
J18_0408A17: し。御船八幡へはゆかで。彥根にぞつきにける。こ
J18_0408B18: れより前。彥根の宗安寺といふ寺より請じ申けれ
J18_0408B19: ども。こたびは八幡へのみと聞て。其地の人人
J18_0408B20: は。いといと殘多く思ひて。けふなん師の竹生島ま
J18_0408B21: うでのよし風聞せるに。せめて御船にても。拜みま
J18_0408B22: ゐらせんとて。遙の岸に。人多く集ひ出たるに。お
J18_0408B23: もひかけずも御船波にゆられて。ここに着せ給ふ
J18_0408B24: を。上なき事によろこび。やがて宗安寺に案内申し
J18_0408B25: き。其夜はよもすがら御説法などありてければ。遠
J18_0408B26: 近の人人聞傳へ。夜をおかして詣たるもの數かぎり
J18_0408B27: なし。其あけの朝ぞ。八幡へはおもむかせ給ひけ
J18_0408B28: る。
J18_0408B29: 文化八年は。宗祖圓光大師六百回の御忌也。この前
J18_0408B30: 後より。念佛の弘通。いよいよ盛になりて。勝尾の
J18_0408B31: 山寺に。月參するもの。五畿七道にわたりて。凡二
J18_0408B32: 十二三國ばかりなりき。剃度の式を請るもの。月月
J18_0408B33: に。二三千人。月並に通夜念佛するもの。一千人に
J18_0408B34: 過ぬ。されば餘りに勞しとて。同九年の春の頃よ

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