浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0407A01: | 大坂。南久太郞町に。黑江屋喜助といへるものあ |
J18_0407A02: | り。師を歸仰する事。宛も佛のことし。されば師も |
J18_0407A03: | あはれにおぼしけん。汝が命終せん時。われ必阿彌 |
J18_0407A04: | 陀如來とともに。來迎するぞとの給ひしを。うれし |
J18_0407A05: | き事におもひて。常に人にもかたり出ぬ。年老病に |
J18_0407A06: | 臥して。或日いまこそ師の來迎し給ひつれといひ |
J18_0407A07: | て。念佛の聲とともに命終せり。年ごろの結縁空し |
J18_0407A08: | からざるも。難有志になんありける。 |
J18_0407A09: | 明石。光明寺の攝化は。同所の住人常本屋半太夫と |
J18_0407A10: | いへる人の發起となれりしなり。其ころ。師。半太夫 |
J18_0407A11: | に問ての給はく。この處をあかしと名づけしは。赤 |
J18_0407A12: | 石にてもありやとの給しに。實にさにて侍るなり。 |
J18_0407A13: | この湊の水中に。赤巖ありて。干潟の時はすこし見 |
J18_0407A14: | え侍が。おそろしき巖にて。おりおりは船人をも取 |
J18_0407A15: | 候なり。常にも船近寄ば。海荒るよしにて。いたづ |
J18_0407A16: | らに見になどゆかぬ所と定り侍なりと答ける。其日 |
J18_0407A17: | 日沒の勤行をはりて師。俄にたち出て。いざあか |
J18_0407B18: | 石見にゆかん。船出させよとの給ふ。半太夫けしか |
J18_0407B19: | る事にはおもひながら。諫申さんもかしこくて。急 |
J18_0407B20: | ぎ船に棹さして。其石の邊に行。げに波にひたりて。 |
J18_0407B21: | 赤巖の靑苔ひしと生るぞ見ゆめる。近く漕寄よと仰 |
J18_0407B22: | ければ。岩の上に掉さしよするに。錫杖の石突にて。 |
J18_0407B23: | ここも巖よ。かしこもとて。つき試給ひ。名號一握 |
J18_0407B24: | ばかりを。錫杖の抦にて突こみ。十念授させ給ふ。 |
J18_0407B25: | 半太夫はもとより船子ども。此ほとりは難所と申傳 |
J18_0407B26: | へて。ちかよるまじき事におもひたるを。今もや海 |
J18_0407B27: | 上荒なんなど。おぢおののきてぞ居たりける。又此 |
J18_0407B28: | 邊のあかし川の流れ出る川口は。年毎に難船のうれ |
J18_0407B29: | へあるよし聞せ給ひて。よき序なりとて。そこにて |
J18_0407B30: | も懇に回向し給ひて。歸らせ玉ひけり。もとより不 |
J18_0407B31: | 惜身命の餘勇ながら。かかる險惡の所にても。おの |
J18_0407B32: | づからなる御所爲を。よにかしこくもたふとくも申 |
J18_0407B33: | 傳けり。 |
J18_0407B34: | 或時。竹生島は。辨才天の淨土なり。いざ參らばや |