ウィンドウを閉じる

J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0406A01: の佛の御舍利也。この舍利四十八粒に分身なす事あ
J18_0406A02: らば。汝が化門ひらけぬべしと御告蒙りし事あり。
J18_0406A03: このころ實にその數に圓滿し給ひぬ。けふの群集
J18_0406A04: は。このしるしなるべし。此家も大なる善根うえた
J18_0406A05: るものかなとて。殊の外によろこばせ給ひけり。師
J18_0406A06: は常に念佛のいとまをしとて。御物語など多くはし
J18_0406A07: 給はざりつるを。此家にてはうちとけて。さまざま
J18_0406A08: の今昔の御修行の事など。かたらせ給ひき。めづら
J18_0406A09: かなりし事なりけり。淸翁のちに。師の蓮臺の上に
J18_0406A10: いまし。金光放給へる御姿を夢のやうに見奉りたる
J18_0406A11: を。やがて其御影を造らしめたり。今なほ上新田常
J18_0406A12: 光庵に安置せり。
J18_0406A13: 大阪長堀に住る。奈良屋佐兵衞といへるもの。師に
J18_0406A14: 深く歸依し奉り。勝尾寺へは月月に詣で。結縁懇な
J18_0406A15: り。文化七年十月十六日の夜。師の弟子の僧ひとり
J18_0406A16: 來て止宿しけれぼ。幸に今宵は念佛せん。かねて賜
J18_0406A17: はりし名號も。同行の方へかしおきたれば。迎へ參
J18_0406B18: らせん。同行の誰かれにも。來給へなど申せとて。
J18_0406B19: 子息伊之助を出しやりたり。伊之助。名號を携へ歸
J18_0406B20: 路を急て。佐のや橋をわたりし頃は。まだ酉の刻少
J18_0406B21: しおくれたるに。この町の油屋何がしの家に。盜賊
J18_0406B22: のいりたりとて。人人騷あへり。ぬす人にげ出にけ
J18_0406B23: る道にて。伊之助を見て。何とかおもひけん。三
J18_0406B24: 刀ばかりきりかけたり。深手負たりとおもひて。あ
J18_0406B25: わてにげかへり。いまぞ盜人にきられたるを。血ど
J18_0406B26: めの藥をなどいひつつ倒たり。父母おどろき。手燭
J18_0406B27: してみれば。げに肩背および腋下に各各疵つきたり。
J18_0406B28: されど血の見えざれば。あやしみてよく見るに。上
J18_0406B29: のきぬはたしがにきれてみゆれど。肌着までは通ら
J18_0406B30: ず。といふに。伊之助もはじめて我に返りて。たし
J18_0406B31: かにきられつると覺しものを。さてはこの名號の威
J18_0406B32: 德にて。たすかりたるなるべしとて。合家うちささ
J18_0406B33: めきて。通夜念佛したりとぞ。これなん不求自得の
J18_0406B34: 利益とも申べきをや。

ウィンドウを閉じる